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改造紙幣とは、明治時代に発行された紙幣の一種です。日本で初めて肖像画が用いられた紙幣で、美しさや希少性により現代では高い価値を持っています。
偽造防止のためにさまざまな対策が施されているのが、過去の紙幣と比べても特徴的な部分といえるでしょう。
この記事では、改造紙幣の歴史やデザイン、種類、買取相場などについてくわしく解説します。
改造紙幣を持っている方や興味のある方は、ぜひ最後までお読みください。
改造紙幣は、日本で初めて肖像が描かれた紙幣です。1881年~1899年の間に作られました。改造紙幣には5種類の額面があり、そのうち50銭と20銭には肖像がありません。
それらの紙幣には肖像の代わりに「大蔵卿」という文字が記されています。
改造紙幣は、明治通宝に続いて発行された紙幣で偽造防止のために、さまざまな対策が施されました。
印刷局の高度な技術により偽造が困難な紙幣となり、偽装しやすいという明治通宝の欠点を「改造」することに成功したのです。
また、改造紙幣は流通し1899年に廃止されるまで、その美しいデザインは一般市民に好意的に受け入れられました。
明治時代の日本では、政府紙幣として明治通宝が発行されていました。ドイツの印刷会社によって作られた紙幣で、ゲルマン紙幣や新紙幣とも呼ばれていました。
しかし、明治通宝には偽造が容易であるという致命的な欠点があったのです。額面が違っても、同じサイズや似たサイズだったため、不正や偽造が横行し、紙幣の信用が低下します。
そこで、明治政府は明治通宝の改良に着手しました。その結果、発行されたのが改造紙幣です。明治通宝とは異なる図案や紙質、透かし、サイズなどを採用しました。
この紙幣の題号は「大日本帝國政府紙幣」と印刷されています。題号は紙幣の正式名称のことで「大日本帝國政府紙幣」とは、明治時代から昭和時代に発行された紙幣の総称です。
明治通宝は9種類ありましたが、全て図案が同じで額面だけが違うという単純な作りでした。これは、明治通宝が日本初の政府紙幣であり、紙幣の製作技術が未熟だったことが原因です。
その反省を活かし、改造紙幣のデザインにはイタリア出身の版画家エドアルド・キヨッソーネが採用され、緻密なデザインが施されました。
しかし、彼が描いた絵は単に緻密というだけではなく、日本の風景や文化を取り入れ、美しさや華やかさも兼ね備えていたのです。
その結果、改造紙幣は国際的にも高く評価され、日本紙幣の歴史において重要な役割を果たしました。
5円と10円の券には、透かしが導入されています。紙幣の裏に水印のように浮かび上がる模様で、偽造を防ぐ効果がありました。
ただし、透かしはこの紙幣が初めてではありません。実は、江戸時代中期には一部の藩札に透かし技術が使われていました。
しかし、江戸時代中期よりも洗練された改造紙幣の透かし技術は、後に発行された日本銀行券にも引き継がれました。
そのため、改造紙幣は今日の日本銀行券の様式の基礎を築いたと言えます。
日本の紙幣には、歴史上の有名人の肖像が描かれています。そして、日本で最初に紙幣になったのは、神功皇后でした。
1円以上の改造紙幣に肖像が使われ、「神功皇后札」や「神功札」とも呼ばれます。
実はこの時、非公開で明治天皇の肖像画を紙幣に使う案もあったのですが、国の状況にそぐわないと判断されて不採用になりました。
神功皇后の肖像はエドアルド・キヨッソーネが描いたため、顔が西洋人風になっています。
その理由は、文献資料や絵画・彫刻を参考にして、紙幣局の女性職員をモデルにしたためでした。
神功皇后は『日本書紀』の中で、非常に大きな武勲を立てたことが記されています。
これから強くて豊かな国になっていくという願いにふさわしい人物像ということで、神功皇后が肖像に選ばれたそうです。
また、朝鮮半島への遠征を正当化しようとしたためだという説もあります。神功皇后は、約1800年前に妊娠したまま朝鮮半島を征服したという武勇伝が語り継がれている人物です。
明治時代の日本は、西洋の列強に対抗するために近代化を進め、同時に朝鮮半島の制圧も狙っていました。
そこで、朝鮮半島への遠征を正当化しようと、神功皇后の肖像が採用されたということです。
菊花の勲章 菊花章紙幣 明治通宝は劣化しやすかった
日本の国威の象徴である菊花章は、明治天皇が創設した最高位の勲章です。改造紙幣は、この菊花章を全ての額面に描いていたので、「菊花章紙幣」とも呼ばれていました。
改造紙幣に菊花章を描くことで、紙幣の権威と信用を高める狙いがあったと考えられます。
5円と10円の券に用いられた透かしは、紙幣用紙の製造過程で紙の厚さを変えることで作られる模様で、光に透かすと見えるようになっています。
改造紙幣の透かしは、トンボや桜花などの図柄で、日本の美しさを反映していました。
額面金額は漢数字のみです。表面中央に大きく額面金額が漢数字で書かれ、その上には小さな「金」の文字が表記されています。裏面には、記録局長の割印が印刷されていました。
改造紙幣の前身である明治通宝は紙質が薄くて破れやすいという欠点を抱えています。
明治通宝は西洋式の洋紙で印刷されていたため、日本の暑く湿った気候には合わず、色あせやすいという欠点がありました。
そのため改造紙幣の紙質は、和紙の原料である三椏(ミツマタ)が使われることになります。この紙幣用紙は、明治通宝よりも厚く丈夫で、日本の気候にも耐えられるものでした。
改造紙幣は、大日本帝國政府紙幣という題号で発行された古紙幣です。
神功皇后の肖像が描かれた10円、5円、1円の紙幣と、大蔵卿印だけがある50銭、20銭の紙幣の2種類があり、偽造を防ぐために全ての紙幣のサイズが異なっています。
額面が大きくなると、紙幣のサイズも大きくなっています。
肖像がないため50銭、20銭の紙幣はデザインもシンプルです。この紙幣は、「大蔵卿50銭」や「大蔵卿20銭」と呼ばれることもあります。
最初に発行されたのは1円の紙幣で、その後20銭、50銭、5円、10円の紙幣が順に作られました。
改造紙幣は、どの額面も高い価値を持つとされていますが、特に10円の紙幣は最も価値が高く、コレクターの間で人気があります。
また、50銭や20銭は1円未満の貨幣ですが、古紙幣としては高い価値があるので、20銭の紙幣でも数千円の値段になります。
額面 | 金拾圓(10円) |
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表面 | 肖像、菊花紋章、偽造罰則文言、記番号、製造年 |
裏面 | 「大日本」「大蔵省」「拾圓」の文字 |
デザイン | 肖像の上下に桜花 肖像を取り囲む輪郭枠内に桜花と桐紋 表面中央の菊花紋章の右側に桂、左側に樫、下側に勲章の菊花章 |
発行年度 | 1883年9月9日発行、1899年12月31日廃止 |
サイズ | 縦93mm、横165mm |
透かし | 「拾圓」と唐草模様 |
色数 | 表面4色、裏面3色 |
番号 | 記番号は漢数字、通し番号は5桁 記号赤色、番号緑色 |
製造枚数 | 3,661,140枚 |
改造紙幣の中で最も価値が高く、未使用で状態が良好な場合、60万円を超えるかもしれません。並品でも10万円前後とされており、古銭の中でも希少価値が高い種類のひとつです。
額面 | 金五圓(5円) |
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表面 | 金拾圓と同様 |
裏面 | 「大日本」「大蔵省」「金五圓」の文字 |
デザイン | 金拾圓と同様 |
発行年度 | 1882年7月発行、1899年12月31日廃止 |
サイズ | 縦83mm、横146mm |
透かし | 「金五圓」と唐草模様 |
色数 | 金拾圓と同様 |
番号 | 金拾圓と同様 |
製造枚数 | 6,850,140枚 |
未使用品の美品であれば、数十万円の査定額がつくこともあり、一般的には10万円前後で取引されることが多い紙幣です。状態によってはそれ以上の価値も期待できます。
額面 | 金壹圓(1円) |
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表面 | 金拾圓と同様 |
裏面 | 裏面左右には蜻蛉の図柄 |
デザイン | 金拾圓と同様 |
発行年度 | 1881年2月発行、1899年12月31日廃止 |
サイズ | 縦77mm、横131mm |
透かし | なし |
色数 | 金拾圓と同様 |
番号 | 金拾圓と同様 |
製造枚数 | 45,642,290枚 |
改造紙幣1円券は、発行期間が短く現存数が少ないため、希少価値があります。未使用で状態が良いものは、数千円から数万円、最大で8万円前後の価格が期待できます。
額面 | 金五拾錢(50銭) |
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表面 | 肖像なし、菊花紋章、製造年 |
裏面 | 「五十錢」の文字、偽造罰則文言、記番号 |
デザイン | 金拾圓と同様、肖像はなし |
発行年度 | 1882年12月発行、1899年12月31日廃止 |
サイズ | 縦65mm×横101mm |
透かし | なし |
色数 | 表面3色、裏面3色 |
番号 | 記番号は漢数字で裏面に印刷、通し番号は6桁 記号赤色、番号緑色 |
製造枚数 | 22,162,143枚 |
この紙幣は、当初予定がなく急遽追加されたため簡素なデザインになっています。この50銭券の図案は、1917年に発行された大正小額政府紙幣の五十銭券を一部改変の上で流用されています。
買取相場は状態にもよりますが、数千円から数万円です。
額面 | 金貳拾錢(20銭) |
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表面 | 金五拾錢と同じ |
裏面 | 「貳拾錢」の文字、偽造罰則文言、記番号 |
デザイン | 金拾圓と同様、肖像はなし |
発行年度 | 1883年6月発行、1899年12月31日廃止 |
サイズ | 縦59mm、横93mm |
透かし | なし |
色数 | 金五拾錢と同じ |
番号 | 金五拾錢と同じ |
製造枚数 | 24,880,058枚 |
改造紙幣のなかでは一番安くなります。状態にもよりますが、未使用の美品であれば最大15,000円前後になります。
改造紙幣は、そのデザインの美しさと印刷技術の精密さで高い評価を受けています。額面の高い紙幣は希少性が高く、状態の良いものがほとんど残っていません。
そのため、古銭の収集家や愛好家からの需要が高く、市場でも高価で取引されています。
改造紙幣はわずか18年間しか流通していなかったため、非常に希少価値が高くなっています。額面が高い紙幣ほどさらに希少性が増し、買取価格も上昇する傾向にあります。
額面によって価値が変わるため、自宅にある改造紙幣を買取に出す場合は、相場を確認しておきましょう。
10円、5円、1円の紙幣は、日本で初めて肖像画が使用されたことで有名な紙幣のため、価値が上がります。
特に10円と5円の紙幣は、保存状態にもよりますが、数万円から数十万円の価値になります。
1円紙幣は肖像がありますが10円、5円と違い透かしがありません。そのため、価値が下がり数千円から数万円程度になります。
また、50銭と20銭の紙幣は、肖像も透かしもない紙幣のため数千円から数万円程度の価値です。
ただし、1円紙幣、50銭と20銭の紙幣も美品になると価値が上がるため、複数の専門業者で鑑定してもらうことをおすすめします。
紙幣の買取価格は、その保存状態に大きく左右されます。改造紙幣は紙製で、劣化しやすい性質を持っているため注意しましょう。
以下のような要因で紙幣は傷つくため、避けるようにしてください。
・手垢の黒ずみ
・太陽光や蛍光灯による変色
・虫食い
・湿気によるシワ
・折り目
紙幣を保護するためには、専用ケースやアルバムの使用がおすすめです。紙幣専用ケースやアルバムに保管することで、紙幣の劣化を避けられます。
また、かさばらずに保管でき、紙幣の枚数や状態を定期的に確認しやすいこともメリットです。
紙幣に付いた汚れは、専門家に見てもらいましょう。無理に取ろうとすると、紙幣を破損させたり、汚れを悪化させるかもしれません。改造紙幣は、適切な保存状態を保つことが大切です。
偽造や劣化が問題だった明治通宝に代わって、改造紙幣という紙幣が作られました。
改造紙幣は、日本で初めて肖像が描かれた紙幣で、強くて豊かな国になっていくという願いにふさわしい人物像ということで神功皇后が採用されました。
5円と10円の改造紙幣にある透かしも、この紙幣の特徴です。
改造紙幣は、現在では貴重な古銭として価値があります。しかし、保存状態によっては価値が変わるため注意してください。
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