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江戸時代に広く使われた「穴銭」のなかでも、比較的有名な古銭といえば「寛永通宝」が挙げられるのではないでしょうか?
ひとくちに寛永通宝といっても、じつにさまざまな種類のものが存在します。
この記事では、そんな寛永通宝の種類一覧を公開し、その価値について迫ります。同じように見える寛永通宝でも細かな違いがあるので、知ると楽しいですよ。
時代劇でおなじみの寛永通宝ですが、江戸時代に日本で広く流通した銭貨で1636年(寛永13年)に創鋳され幕末まで作られました。
形は円形で、中心に正方形の穴が開いており、表面には「寛永通寳」の文字が上下右左の順に刻まれています。
当時の額面は裏面に波形が刻まれているものが4文、刻まれていないものが1文として通用していました。
さて、香川県観音寺市に銭形砂絵という観光スポットがあります。
寛永通宝を模写したこの砂絵は有明浜の白砂に描かれたもので、その大きさは東西122m、南北90m、周囲345mもあります。
1633年(寛永10年)に藩主、生駒高俊公を歓迎するために一夜にして作られたと言われており、この砂絵を見れば健康で長生きできてお金に不自由しないと伝えられる、縁起の良いパワースポットになっています。
寛永通宝はどの種類も全部「穴銭」に分類されます。
穴銭とは真ん中に穴が開いている銭貨のことをいいますが、寛永通宝は中央の穴が四角いのが特徴です。
鋳造した当時の江戸時代での技術では、四角い穴の銭貨が量産に向いていたという背景があります。
寛永通宝は大きく分けると「銅一文銭」「鉄一文銭」「真鍮四文銭」「鉄四文銭」となっており、さらに銅一門銭は年代によって「古寛永」と「新寛永」に分けられます。
1659年までに作られたものが古寛永、1668年以降に作られたものが新寛永となります。
寛永通宝は江戸時代に日本国内で広く流通した穴銭の一種で、「母銭」「子銭」「文字のデザイン」の差を含めると全168種類あります。
1636年(寛永13年)に初めて作られて以降幕末まで鋳造されており、10円単位から300,000円程で取引されています。
しかし、デザインの違いによって種類が区別されるので、素人が正確に判断するのは大変困難です。
正しい価値を知るには、査定士などプロに鑑定してもらうことをおすすめします。
二水永は水戸の富商・佐藤新助が作った寛永通宝で、1626年(寛永3年)に発行された最も古い種類の古寛永です。
表面の「永」の字が漢字の「二」と「水」を組み合わせたように見えるデザインが特徴で、裏面には寛永3年に鋳造されたことを示す「三」の字が刻印されています。
前述の通り古い種類のため、歴史的価値が高く比較的高い相場で取引されています。
状態によって価格幅があるので相場は1,000円~50,000円前後になりますが、状態の良いレアなものは一枚数万円になることも。
芝銭は江戸幕府が銀座を作った1636年(寛永13年)に鋳造された古寛永の一種です。現在の港区にあたる芝網縄手で鋳造されました。
発行枚数が非常に多いため高い価値はつきづらく、通用銭の相場は10円~500円程です。ただし母銭であれば価値が跳ね上がり、15,000円前後になる可能性もあります。
表面には寛永通宝の文字が刻まれていますが、裏面は何も刻まれていません。寛永通宝の「通」や「永」の字が草書体となった「草点」のものが多いのが特徴です。
浅草銭は1636年(寛永13年)、浅草に銭座が作られたときに発行された古寛永のひとつです。
浅草銭には「御蔵銭」や「志津磨百手」等いくつもの呼び名がありますが、これは浅草銭に刻まれている書体の種類が多いことによると考えられています。
浅草銭に刻まれている文字はそれぞれ異なっており、書体により価値はさまざまです。
そのため素人には浅草銭の詳細な種類を見分け、価値を判断することは非常に困難といえるでしょう。
芝銭同様、表面には寛永通宝の文字が刻まれており裏面は何も刻まれていない寛永通宝です。その書体は1枚ごとに異なると言われるほど多様で、買取価格は500円~1,000円程となります。
古寛永のひとつである水戸銭。1637年(寛永14年)の寛永通宝で、現在ではかつて水戸銭を鋳造していた銭谷稲生神社にその名を残しています。
水戸銭は古寛永のなかでも分類が多く、安いものから価値のある稀なものまで幅広く存在します。
芝銭ほどではないものの、水戸銭も大量に鋳造されて流通していました。
そのため相場は安くなりがちで、概ね100円~500円程です。稀に数万円程の高値で取引されるものもありますが、目立つ特徴が少ないので、判別するには専門の知識が必須になります。
こちらもほかの古寛永同様、表面には寛永通宝の文字が刻まれており、裏面には何も記されていません。
松本銭は1637年(寛永14年)に信濃にある松本で鋳造された新寛永です。
発行枚数がとても少ない寛永通宝で、松本市立博物館に所蔵されているほど希少価値が高いため、市場に出回ることがほとんどありません。
寛永通宝のなかでもとくに高値で取引されています。
取引価格は状態にもよりますが、100円~500円程。偽物やレプリカが多く流通しているので、本物かどうかを見分けるには熟練したプロの目が必要になります。
松本銭の特徴は、表面の寶の字が真ん中の四角い穴に向かって傾いている「斜寶」、永の字の真ん中の横が細く縦が太い「細太」などがあげられます。
裏面はほかの寛永通宝同様、何も刻まれていません。
文銭は江戸庶民に馴染み深い寛永通宝でした。
円形の中央に四角形の穴が開いており、裏に「文」の字があることからこれに似せて作った「文銭巻き」、中央を四角形に抜いた「文銭きゅうり」「文銭うど」「文銭たけのこ」などがあります。
1688年(寛文8年)に亀戸で鋳造されたと言われています。
しかし、文銭といってもこれ1種類ではなく書体などによって多くの種類に分類され、なかには10万円を超える価値を持つものも存在します。
一般的な文銭の相場は10円~1,000円程です。高額査定となる島屋文とよく似ているため、見極めには細心の注意が必要です。
文銭は裏面に「文」の字が入っていますが、それ以外にはとくに目立った特徴はありません。
なお、裏面の「文」という文字は、表面の「寛」と合わせて当時の元号である「寛文」を表しています。
島屋文は1668年(寛文8年)に鋳造されたレアな寛永通宝です。
相場は100,000円~300,000円と寛永通宝のなかでも発行枚数が非常に少ないためプレミアとなり、とくに保存状態が良いものは高値で取引されています。
島屋文は、以前は滅多にお目にかかれないほど珍しい寛永通宝でしたが、最近では古銭買取市場が活発になってきたことで、少しずつではありますが見かけるようになってきました。
表面の「通」の字の右上部分にある、カタカナの「マ」が「ユ」に近い形になっているのが島屋文の特徴です。
島屋文は文銭の一種です。裏面には「文」と刻まれているのがほとんどですが、文の字がないものも存在します。
正字入文は退点文と同年の1688年(寛文8年)に亀戸で発行された新寛永の1文銭です。
正字入文の特徴は「文」の字のなべぶたの下部分が「入」に似ているという点です。
相場は10円程ですが、希少価値が高いものは数万円になることもあります。
正字背文は1668年(寛文8年)に亀戸で鋳造された1文銭の寛永通宝。こちらも裏に「文」という文字が刻まれており、文銭の仲間です。
分類上の基本となる書体として扱われていることから、現在では正字背文と呼ばれています。
表面の「永」の字の2画目の曲がり角がかすかに飛び出ているのが特徴。発行枚数が多いため、相場も10円からと価値はあまり高くはありません。
しかし、ものによってはもう少し高い値がつく場合もあり、稀に見つかる文字の書体が異なるものにはプレミア価値がつくことも。
退点文は1668年(寛文8年)に鋳造された文銭の一種です。裏面の「文」の字の上部の点が他の文銭よりも右側に寄っており、その見た目から「退点文」と呼ばれるようになりました。
全体に肥字で独特の書体です。
表面にある寛の「見」部分の前足が短く、重心が右に寄っているのも特徴的。退点文は比較的希少価値の高い寛永通宝で、市場における相場は10円からとなっています。
日光御用銭は1714年(正徳4年)に発行された寛永通宝です。
徳川家が日光参拝する際に使用するという目的のために鋳造されたと言われ、当時の元号の正徳をとって「正徳御用銭」と呼ばれることもあります。
特徴として挙げられるのが、表面に刻まれた「寶」の漢字の「尓」の部分にハネが無く、真っ直ぐであるという点です。ちなみに裏面は何も刻まれていません。
一般的に寛永通宝は通用銭より母銭の方がはるかに高値がつくのですが、日光御用銭は通用銭の残存数が少なく、状態が良いものが多いことから100,000円以上で売れることがあります。
下野国足尾銭は現在の栃木県上都賀郡にある足尾銅山から採取した銅で作られていました。
1741年(寛保1年)、銅の産出量が少なくなり、困窮した足尾銅山を救う目的で鋳造された新寛永の寛永通宝です。
足尾銅山の銅を使用していることから裏面には「足」という文字が刻まれているので見分けがつきやすくなっています。
下野国足尾銭は「足字銭」という異名があり、大きさが統一ではないという特徴があります。
大きいものほど価値は高くなりますが、買取相場は10円からで価値は低めです。
背広佐は1717年(享保2年)に作られた新寛永の寛永通宝で、佐渡の銭座で鋳造された佐渡銭の一種です。
特徴は鋳造場所の印である「佐」が裏面に刻印されていることで、「佐」の字の4画目が目立って大きくなっています。
その多くは裏に「佐」の字があり、これらは佐渡で鋳造されたと背広佐の鋳造の記録には残されています。
しかし長期に渡って鋳造されていたため、なかには「佐」の字の無いものがあったり、書体が複数あったりといったケースもあります。
鋳銭事業は順調だったとは言えず、鋳造当時は立派な背広佐も時代を経るに従って粗末なものになってしまったことが想像できます。
相場はほとんどが10円からになることが多いですが、寛永通宝のなかでも希少価値が高い方なので、母銭であれば高値がつく場合も。
耳白銭は1724年(享保9年)に亀戸で鋳造された新寛永の寛永通宝で、外輪が広いのが特徴です。
当時、貨幣の外輪を「耳」と呼んでおり、江戸弁で「広い」を「シロイ」と発音していたことから「みみひろ」が変化して「耳白銭」となったと言われています。
表面に刻まれた「寶」の「貝」部分が「耳」と「白」のようになっている特徴があります。裏面は何もありません。
耳白銭は寛永通宝のなかでは比較的価値が高めでコレクターにも注目されていますが、10円からが買取相場となります。
石ノ巻銭は、1728年(享保13年)に発行された新寛永の寛永通宝です。
現在の仙台市・石巻市辺りである陸奥国牡鹿郡石ノ巻で鋳造され、裏に「仙」という文字が刻まれていることと、文字の書体が幅広いのが特徴です。
表面の「通」の字の「しんにょう」が現在の形のものもあれば、ひとつ多くひねって書かれているものもあります。
また、「通」の字の「マ」の部分が「マ」や「コ」のものもあったりと、バリエーション豊かな銭貨でもあります。
長期に渡って鋳造されていたこともあり、「仙」の字が無いものも存在します。発行枚数が多いため、書体の差異によって価値が変わってきます。
相場は10円~10,000円前後で比較的希少価値が高いため、状態によって高価買取の対象となることもあります。
小梅銭は1737年(元文2年)に江戸の本所、現在のスカイツリー近辺にあった小梅村というところで作られた新寛永の寛永通宝です。
裏面には小梅の「小」という文字が刻まれているうえに他の寛永通宝と比べて軽量なので、小梅銭である判別は簡単にできます。
文字の書体が豊富であるという特徴もあり、書体によって価値が変動します。
1739年(元文4年)以降に鋳造されたものに比べ、中央の穴が狭く作られたので「狭穿」とされています。買取相場は状態により10円~1,000円前後とあまり高くはありません。
寛永通宝に限りませんが、古銭は文字や刻印がはっきりしている方が高く売れやすいです。寛永通宝などの文字や裏面の刻印がはっきりしているものほど高く売れる傾向があります。
同じ古銭でもより未使用に近いものや、発行枚数が少ないものや母銭は高値がつきます。
寛永通宝のなかでもプレミア的価値のある銭貨は「二水永」と「島屋文」になります。
古寛永のなかで最も古いと言われる二水永は希少価値が高く、プレミア価値がつく寛永通宝です。買取相場は1,000~50,000円程ですが、状態次第ではさらに高額の買取価格も期待できます。
新寛永の初期に鋳造された島屋文は寛永通宝のなかでもとくにプレミア価値があり、文銭のなかで最も希少価値が高いです。
買取相場は3,500円~300,000円程で、状態によってはさらに高値になる可能性も。
そして島屋文は細かく分けると「島屋文小頭通」や「島屋文細縁」などの種類が存在します。どれであっても島屋文は希少価値が高いので高額になる傾向があります。
寛永通宝をはじめ、古銭を高く売るにはきれいな状態を保つことが大事です。そのための保管方法をご紹介します。
劣化の要因となるのが手垢や皮脂などの汚れがついた状態で放置してしまうこと。ほかにも高温多湿の場所に保管した場合は、劣化や変色の原因になります。
それらを防ぐには、市販のコレクション用コインホルダーを利用すること。そうすれば、種類ごとに整理が可能です。
なお、保管場所も、カビなどを防ぐために風通しがよく、直射日光が当たらない場所に保管することが大事になります。
サビを磨いたり、洗浄してピカピカにすることで価値が上がると思いがちですがそうではありません。
汚れや経年劣化は古銭の持つ味や価値となります。サビは入り方や色までもが美しさのひとつなのです。
クリーニングをすると見た目が大きく変化し、古銭の価値を下げてしまいます。現代の最新技術で磨き上げたとしても鋳造された状態にはなりません。
美しく磨くのではなく、今よりも状態を悪くしないように保管することをおすすめします。
古銭はデリケートですので、正しい保管方法を身につけて実行していくことが大事になります。
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