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中国は古くから貨幣経済が根づいた国のひとつです。王朝や皇帝の交代のたびに新しい貨幣を鋳造したため、数多くの古銭が現代にも伝わっています。
そんな中国の古銭の一種が、清朝時代に発行された咸豊通宝(かんぽうつうほう)です。
この記事では、清朝末期に発行された咸豊通宝について、その歴史や市場での価値を解説していきます。
中国の古銭は宋銭や明銭のように、発行した王朝の名前で総称されます。咸豊通宝もまた清によって発行された清朝銭と呼ばれる古銭の一種です。
清朝銭の名前は発行した当代の皇帝の名前がつけられる習わしがあり、咸豊通宝は、その名前の通り9代皇帝の咸豊帝の時代に発行されました。
咸豊通宝は古銭に分類されますが、発行開始は1851年と非常に新しい貨幣です。同じ年にはロンドンで第1回万国博覧会が開催、ニューヨーク・タイムズが創刊されるなど記念すべきことがいくつも行われました。
一方で中国は、対外戦争や貿易の余波で経済が混乱、さらには反乱が勃発するなど安定とは程遠い時代でした。
そのような時代の貨幣のため、銀との交換比が従来の銭1,000文から2,000文と大幅にインフレした記録も残っています。欧州諸国に押されはじめた清朝の衰退を象徴する貨幣と言えるでしょう。
どの清朝銭にも共通して、表面に貨幣の名前、裏面に漢字と満州文字が刻まれています。裏面の文字は貨幣がどこで鋳造されたかを示すものです。
そして、咸豊通宝の裏面には、これらに加えて貨幣の価値を示す額面が刻まれています。
この額面は一文銭から当千銭まで、歴代の清朝銭と比較しても圧倒的に多くの種類が存在します。この種類の多さこそが、咸豊通宝の特徴と言えるでしょう。
しかし、種類が多いと、偽物が混じってもなかなか気づかれにくくなります。加えて、咸豊通宝が発行された1851年から1862年の11年間、清朝は大規模な反乱の平定に追われていました。
その混乱に乗じて、多くの贋金が作られたことは容易に推察できます。
また、度重なる内乱や対外戦争の結果、現存する多くの咸豊通宝が摩耗し通貨として使い物にならないびた銭となっていることも事実です。
民間人の海外渡航禁止など海禁政策を厳格に行った明朝と比べると、清朝は貿易には積極的でした。琉球やベトナムから遠くはイギリスやフランスまで、非常に広い範囲で貿易を行った記録が残っています。
日本もまた清朝の貿易相手の一国です。そのため、長崎貿易を通じて、多くの咸豊通宝が支払代金として日本に流入しました。
その他にも順治通宝(じゅんちつうほう)や康熙通宝(こうきつうほう)、雍正通宝(ようせいつうほう)など、咸豊通宝より古い時代の清朝銭も日本で多く見つかっています。
これらの清朝銭は日本においては輸入銭と呼ばれています。明代の永楽通宝(えいらくつうほう)のような渡来銭は、当時貨幣がなかった日本での流通を目的として輸入されました。
それと比べると、輸入銭は貿易の関係で偶然流入した貨幣です。当然、江戸幕府は自前の通貨を発行していたため、自国通貨の流通の妨げになる清朝銭の輸入と流通を禁止しました。
しかし、清朝の海禁の緩和により、長崎貿易が活発化したため輸入銭の流入は続きます。結局、輸入銭は明治政府の貨幣整理政策も生き残り、昭和初期まで使用されたとされています。
咸豊通宝の最たる特徴は、その種類の多さにあります。一口に咸豊通宝と言っても、額面や発行場所の違い、材質や大きさまで多種多様です。
ここからは咸豊通宝を分類するときの基準を解説していきます。
咸豊通宝を分類する上で、額面の分類は重要な要素です。咸豊通宝には、一文、当五、当十、当二十、当五十、当百、当千など、ほかの貨幣よりも非常に多くの金種が発行された記録が残っています。
これらの数字は、それぞれが一文に対しどれだけの価値があるかを示すものです。例えば、裏面に「一百」と刻まれた当百銭は1枚で100文の価値を持ちます。
市場では額面が大きいほど高額で取引される傾向にあります。特に、当百銭となると状態によっては10万円以上で取引されることも珍しくありません。
反面、一文銭はキログラム単位で投げ売りされるなど、非常に粗雑に扱われています。このように咸豊通宝の額面による取引価格の振れ幅は、非常に大きいため注意が必要です。
清朝は非常に広大な領域を支配した国であったため、各地に貨幣の鋳造場所を設けていました。裏面に記載される「宝福局」「宝泉局」「宝蘇局」がそれです。
各地の鋳造場所の名前は、咸豊通宝の裏面に刻まれており、どこで発行された貨幣か一目で判断できるようになっています。
発行場所の違いによる取引価格には、特別大きな差はありません。しかし、コレクターにとっては大きな違いと言えるでしょう。
もし発行場所までこだわってコレクションするならば、満州文字で書かれた発行場所が読めなければなりません。素人には非常に困難なため、信頼できる鑑定士に取引を依頼しましょう。
歴代の中国銭としては珍しく、銅銭のほかに鉄銭が存在する点も咸豊通宝の特徴です。
もともと国内の銅の産出量の減少が明代から続いていたことに加え、アヘン戦争やアロー戦争といった度重なる敗戦による戦後賠償も国内の銅が減少する要因となりました。
銅不足を補うために、低額額面の咸豊通宝は鉄でできているものも珍しくありません。
取引市場では、鉄銭の方がやや相場が高額です。これは銅に比べ鉄が錆びやすい金属であることから損傷が激しく、美品がそれほど多く残っていないことが理由です。
その他、黄銅製の咸豊通宝も確認されています。
同じ額面の貨幣には同じ価値を持たせるため、政府によってサイズや重量が厳格に決められています。
例えば、現行の日本の500円硬貨は1,000枚の合計誤差が13g以内と定められており、これを超えることは許されません。
しかし、咸豊通宝は同じ額面の貨幣でも、サイズに異常にばらつきがある貨幣です。例えば同じ当百銭であっても、サイズは50㎜から大きいものでは80㎜まで幅広く存在します。
咸豊通宝の取引価格は、サイズの違いも大きく関係します。大きいほど高額で取引される傾向にあり、額面に関わらず70㎜を超えると数十万円以上の値がつくことも珍しくありません。
咸豊通宝は種類が多いため、古銭市場における取引価格も数十円から数十万円と非常に開きが大きい貨幣です。
特に、咸豊通宝の一文銭などは何十枚単位で投げ売りされているものもあり、古銭だからと期待すると、あまりの価値の低さに驚くことがあります。
ここからは、咸豊通宝を取引に出すときに、より高額で買い取ってもらうための方法を解説します。
保存状態のよい古銭は、それだけ取引価格が高額になります。しかし、咸豊通宝に限らず、中国の古銭の多くは銅製です。
そのため、流通する過程でどうしても摩耗と錆びが発生することは避けられません。特に、咸豊通宝には鉄銭も存在するため、ほかの古銭に比べても錆びには注意が必要です。
少しの湿気でも劣化が進んでいくため、保存するときは、極力空気に触れさせない気密性の高いケースに保管することが求められます。
汚れが気になる場合でも、水やワックスなどを使用すると錆びや傷の原因となり、価値が下がってしまいます。掃除のときは、柔らかい布で拭くなど丁寧に扱いましょう。
咸豊通宝は非常に種類が多いため、コレクションが難しい貨幣のひとつです。そのため、コレクターも一回の取引で数種類の咸豊通宝を入手することを考えています。
買取業者もこの心理を理解しているため、売り手としては何種類かの貨幣をまとめて査定に出す方が、高額で買い取ってもらいやすくなります。
このとき、組み合わせる貨幣には関連性の高い古銭を用意します。
例えば、異なる額面や造幣局の咸豊通宝をいくつかまとめる、もう少し広い括りで順治通宝や康熙通宝などを組み合わせた清朝銭のセットを作るなどが考えられます。
また、古銭本体だけではなく鑑定書やケースなどの付属品もあわせて買取に出すと、古銭の価値を客観的に証明できるため、査定もスムーズです。
咸豊通宝は種類の多さゆえに、非常に取引価格の幅が大きい古銭です。叩き売りされているものもあれば、値段がつけられないほど希少価値の高い咸豊通宝も存在します。
しかし、咸豊通宝には発行当時の贋金や、現代になって作られた精巧なレプリカも多く出回っていることも事実です。
特に現代のレプリカは、本物と比べても遜色ない出来栄えのものも多数あります。なかには、あえて錆びさせて本物のように見せた贋金もあり、素人では真贋の判断ができません。
古銭の名前だけで高額な取引を行うと、取引後の無用なトラブルを招く可能性もあります。咸豊通宝の取引は素人判断で行わず、古銭に詳しい買取業者を選びましょう。
現在、咸豊通宝は安価なものでは数十円、高いものになると値段がつけられないほど高額な一品もあります。この取引価格の大幅な違いは、咸豊通宝に多くの種類が存在するためです。
咸豊通宝の発行年間は1851年から1862年までのわずか11年です。しかし、その間に発行された咸豊通宝の種類は、細かい違いも含めると100や200では足りないでしょう。
咸豊通宝はわずかな違いで取引価格が異なります。
そのため、各買取業者で全く異なる金額を提示する可能性も十分に考えられます。取引に出すときは、買取業者をいくつかピックアップしそれぞれで査定してもらいましょう。
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