第1回

金貨の世界へようこそ―なぜ今、金貨が注目されているのか―

金貨の世界へようこそ―なぜ今、金貨が注目されているのか―

あなたは、約40年前に6万円で買ったものが、今では70万円以上の価値になると想像できるでしょうか。 実際に、それを成し遂げた資産があります。それが「金貨」です。

史上最高値を更新し続ける金価格と、金貨への注目

近年、「金」という資産に改めて注目が集まっています。

2025年9月、国内の金価格が史上初めて1gあたり2万円を突破しました。

この歴史的な瞬間は、ニュースや各種メディアで大きく報じられ、金に関する話題を目にする機会が格段に増えました。

このタイミングで、改めて金という存在に関心を持った方も多いのではないでしょうか。

その後も金価格の上昇は止まることなく、2026年1月には初めて1gあたり3万円台を記録。

わずか数か月の間に50%もの価格上昇を見せ、金という資産の存在感は一層高まっています。

そして金への注目と同時に、いま金で作られている「金貨」にも熱い視線が注がれています。

6万円が70万円に——日本人と金貨の40年

「金貨」と聞いて、どんなイメージを思い浮かべますか?富裕層だけが手にする高嶺の花、あるいはマニアやコレクターだけが扱う収集品——そんなイメージを抱く方も少なくないでしょう。

確かに2026年1月現在、金価格は1グラムあたり2万5000円から3万円台という高水準で推移しており、1オンス(約31.1グラム)の金貨となると70万円以上。決して気軽に手が出せる金額ではありません。

しかし、金貨はかつて、もっと安価に手に入る存在でした。この章では、日本における金貨の歴史を振り返ってみましょう。

金投資の夜明け—1970年代からの自由化

日本で金が個人の投資対象として開かれたのは、1970年代のことです。

それまで厳しく規制されていた金の輸入が自由化され、一般の人々も金地金を購入できるようになりました。

そして1980年、世界は激動の時代を迎えます。

第二次オイルショックによる経済混乱、米ソ冷戦の緊張激化——こうした不安定な国際情勢を背景に、金価格は当時としては過去最高となる1グラム6000円台を記録しました。

金が「有事の資産」として認識されるようになったのは、まさにこの時期からです。

経済や政治が不透明になるほど、実物資産である金の価値が見直される——この法則は、40年以上経った今も変わっていません。

日本の金貨ブームを牽引した「クルーガーランド金貨」

クルーガーランド金貨(2013年銘)

日本における金貨投資の先駆けとなったのが、南アフリカ共和国造幣局が発行するクルーガーランド金貨です。

1976年に発行が始まったこの金貨は、品位K22(純度91.67%)の投資用金貨として、世界各国で流通しました。

ちなみにこのクルーガーランド金貨のような投資や資産保全を目的として発行された金貨を「地金型金貨(じがねがたきんか)」と呼びます。

日本でも1980年以降、金投資への関心の高まりとともに海外金貨の輸入が本格化します。

当時、最も信頼性が高いと評価されていたのが、クルーガーランド金貨でした。

当時は宝飾店のテレビCMでクルーガーランド金貨が大々的に取り上げられるほどの人気を博したのです。

メイプルリーフ金貨の登場とバブル景気の到来

メイプルリーフ金貨(2020年銘)

1979年には、カナダでメイプルリーフ金貨が発行されました。

現在では世界有数の流通量を誇る地金型金貨として知られており、その名の由来でもある裏面の「サトウカエデの葉(メイプルリーフ)」のデザインは、実際に手にしたことがなくても目にしたことがあるという方も多いでしょう。

品位はK24(純度99.99%)と非常に高く、メイプルリーフ金貨はクルーガーランド金貨と並び、地金型金貨を代表する存在となりました。

1980年代に入ると、これらの海外地金型金貨は貴金属専門店や百貨店の売場でも取り扱われるようになり、日本国内でも徐々に認知が広がっていきます。

さらに、金貨は投資対象としてだけでなく、コインネックレスやコインペンダントなど、ジュエリーとしても用いられるようになりました。投資家層に限らず、女性を中心にファッションアイテムとしても受け入れられたことで金貨はより身近な存在になったのです。

1986年前後は、バブル経済の高揚感も重なった時期です。

この年の金の国内小売価格を見ると、金は1gあたりおおむね1,800から2,000円台で推移していました。

これを1オンス(約31.1g)のメイプルリーフ金貨に換算すると5万円台から6万円台で購入できる計算になります。

当時のサラリーマンの平均月収が20万円台から30万円弱だったことを考えると、金貨は決して極端に手の届かない存在ではありませんでした。

ボーナスや貯蓄の一部を金貨に振り向ける——そんな選択肢が、ごく普通の会社員にも開かれていたのです。

国民的話題となった「天皇陛下御在位六十年記念金貨」

天皇陛下御在位六十年記念金貨

こうしてクルーガーランド金貨やメイプルリーフ金貨などの海外金貨が個人投資家のあいだで存在感を高めていった一方で、1986年の日本では、もう一つ大きな金貨の話題が生まれます。

それが、日本初の本格的な記念金貨となった「天皇陛下御在位六十年記念10万円金貨」でした。


この金貨が大きな話題となったのは、何よりも日本で初めての記念金貨かつ額面10万円で発行されたこと、そして天皇陛下の御在位60年という歴史的な節目を祝う意味を持つものだったからです。

購入には抽選方式が採用されましたが、希望者が殺到し、高い応募倍率となりました。

額面どおりの10万円で販売され、純金製という特別感も記念品としての価値を一層高めたのです。

天皇陛下御在位六十年記念金貨の引換抽選券

天皇陛下御在位六十年記念金貨の引換抽選券

海外の地金型金貨と、日本初の記念金貨という二つの流れが重なったことで、当時の日本には一種の“金貨ブーム”ともいえる熱気が生まれていました。

その後、バブル崩壊や金価格の低迷など、経済環境の変化によって金貨市場への熱は一時的に落ち着きを見せたものの、近年では、世界情勢の不透明感やインフレ懸念、資産防衛ニーズの高まりを背景に、金貨は再び注目を集める存在となっています。

そして興味深いのは、1986年当時に5万円台から6万円台で購入できた1オンスのメイプルリーフ金貨が、2026年現在では70万円を超える価値になっているという事実です。

約35〜40年で10倍以上——金貨が長い年月をかけてどのように評価されてきたかを示す一例といえるでしょう。

金貨が持つ「2つの顔」——デザインと資産性

金貨の魅力は、単なる投資対象としての側面だけにとどまりません。

金貨には「デザインとしての顔」と「資産としての顔」という、2つの異なる魅力が同居しています。

デザインとしての顔—芸術性と希少性

金貨は世界各国で発行されており、それぞれの国の歴史や文化、誇りが刻まれた芸術作品でもあります。

たとえば、中国で発行されている「パンダ金貨」は、1982年から毎年発行されていますが、表面に描かれるジャイアントパンダのデザインが毎年異なります。

笹を抱えるパンダ、歩くパンダ、水を飲むパンダ――その愛らしいデザインは見る者を魅了し、「すべてのデザインを集めたい」というコレクターを生み出してきました。

さらに、金貨の価値を高めているのが「発行枚数の限定性」です。

たとえば1982年銘の1オンス パンダ金貨は約1万4000枚、1998年銘の2分の1オンスに至ってはわずか約4200枚しか発行されていません。

一般的に、近代金貨において1万枚前後以下の発行枚数であれば希少価値があるとされており、デザインの美しさと希少性が相まって、愛好家にとっては見逃せない1枚となるのです。

パンダ金貨25周年記念バージョン

資産としての顔—インフレに強く、価値を守る力

金貨のもう一つの顔、それは「資産としての顔」です。

金貨は金を素材としてつくられた硬貨であり、金貨を保有することは、「金」という実物資産を保有することにほかなりません。

金は利息を生まず、配当もありませんが、その代わりに資産を守る力に優れています。

たとえば、現金100万円を持っていた場合、インフレ率が年2%進めば、その実質的な価値は約98万円に目減りします。

しかし、金はそれ自体に価値があり、インフレが進めば金価格も上昇するため、資産価値を保つことができます。

また、金は世界中どこでも換金可能であり、通貨のように特定の国家や機関に依存しません。

この普遍性こそが、金が「有事の資産」「安全資産」と呼ばれる理由です。


つまり、「デザインを楽しむために金貨を集めていたら、それが資産防衛にもなっていた」という、他の資産にはない面白さが金貨の世界には存在するのです。

金貨の世界 コラム一覧へ こちら金貨販売本舗TOPへ