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インゴットとは?初心者向けに種類、刻印の意味、メリット・デメリットを解説

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世界中で普遍的な価値を持つ金は、よく安全資産と呼ばれます。
無価値になる可能性が非常に低く、持っておくと有事のときにも資産が減らず安心です。
特に、昨今は世界的に国際情勢や経済に不安を持つ人が多く、資産を守るために金へ投資する人が増えています。

しかし、いざ金へ投資しようと思っても、金地金や金貨など「金そのもの」を直接買い付ける方法や金投資信託のように間接的に買う方法など、金商品の形は何種類も存在しています。
知らずにはじめてしまうと思わぬ失敗につながりかねません。

さて、そんな金の買い方の1つにインゴットがあります。
金にまつわる言葉でよく聞く言葉かもしれませんが、実際にインゴットがどのようなものかを理解している人は少ないのではないでしょうか。

この記事では、これから金を買おうと思っている人に向けて、よく聞く金のインゴットについて解説していきます。

1. インゴットとは?

インゴット(ingot)は本来、金や鉄など種類を問わず金属を精錬して使いやすい一塊にしたもの全般を指します。
鉱山から産出されたばかりの鉱石には、数多くの不純物が混ざっており、このままでは金属としての価値は低く取引することができません。
不純物を取り除き加工しやすい形に整えられて、はじめて市場でインゴットとして取引されるようになります。

多くの金属のインゴットは厚みのある棒状になっているため、「バー」とも呼ばれます。
保管しやすいように棒状になったとされていますが、実際のインゴットの用途はさまざまです。
特に金やプラチナのような貴金属類は、大きいインゴットは投資に用いられますが、小さいインゴットはアクセサリーや工業製品に加工されて使われています。

■ 金の延べ棒・地金・金塊との違い

インゴットは、そもそも金属の塊を示す言葉です。
そのため「金のインゴット」は言い換えれば「金の塊」、つまり金塊と同じ意味になります。
また、前述のとおりインゴットはその形状からバーとも呼ばれています。

本質的には「金の延べ棒」も「金のインゴット」と何も変わりません。
どれも金の塊を指す言葉であると考えて問題ないでしょう。

同様に、金地金も金の塊を指す言葉です。
そのため投資の場では、あまり用語としては区別されていません。

ただし、正確に区分するならば、地金はインゴットやアクセサリーなどを製造する前の素材を指すことが一般的です。
また、純度や大きさなどに国際的な規格があるインゴットとは異なり、金地金は金を用いた合金も該当するため、金地金が必ずしも純金を指すとは限らないことには注意が必要です。

■ 銀やプラチナのインゴットもある

単純にインゴットというと、やはり金製のインゴットを思い浮かべるのではないでしょうか。

しかし、本来、インゴットは金属の塊を指す言葉であるため、金以外の種類のインゴット、たとえば銀やプラチナといった貴金属のほか、鉄や銅といった身近な金属のインゴットも存在します。
どの種類の金属でできたインゴットでも加工や保管を考え、純度や大きさに関する規格が設けられています。

多くの金属のインゴットのなかで、投資の対象になっているのは主に金と銀、そしてプラチナです。
いずれも希少価値の高く、アクセサリーや工業製品としても高い需要がある金属です。
また、取引量は少ないもののパラジウムやタングステンなど、いわゆるレアメタルと呼ばれる金属も、昨今の工業的な需要の高まりから高値で取引されています。

2. インゴットの重さと規定

人類が金をインゴットにして保管・取引していた歴史は非常に古く、エジプト文明が発祥とされています。
事実、エジプトにある遺跡からは、大きさや純度などが均一化されたドーナッツ状のインゴットがいくつも発見されています。

それからも金のインゴットは各地で作られますが、時代を経るにしたがって遠隔地との取引が増えてくると、より国際的な規格統一が求められるようになっていきました。

現在のインゴットに関する国際的な規格は、イギリスにあるロンドン貴金属市場協会(LBMA)が2017年に決定したものが広く用いられています。
この協会はインゴットの規格以外にも、金の精錬方法やインゴットを作る企業の認可も請け負う世界的な組織です。
この協会のお墨付きを得たインゴットは、その信頼性の高さから世界中で取引されています。

■ 一般的な重さとその表記

インゴットの表面には、そのインゴットの重さが刻まれています。
インゴットは重さ順に12.5kg、1㎏、500g、100g、50g、20g、10g、5g、2g、1gの10種類が存在しており、一般的な取引には、キロバーと呼ばれる1㎏のインゴットが用いられることがほとんどです。

また、500gのインゴットをグラムバー、それ以下の重さのものをスモールバーとも呼びます。
これら小さいサイズのインゴットは、投資による資産形成を目的とした購入以外にもアクセサリー用途としての需要も高く、幅広い企業や個人が購入しています。

反対に、ラージバーとも呼ばれる最も大きい12.5㎏のインゴットは、ほとんどがロンドンの金市場での取引に使われるため、一般市場ではほとんど見かけません。

小さいサイズなら金貨購入もおすすめ!
金はその希少価値ゆえに、そもそもの価格が非常に高い品物です。
加えて、近年の経済不安による投資目的による購入や工業利用による需要の高まりから、さらに市場価格が高くなっています。

キロバーを1本購入するだけでも何十万、何百万円もの資金が必要になることに加えて、市場価格の変動が読みにくいこともあり、あまり初心者向きの投資とは言えません。
また、500g以下のインゴットは取引に手数料が必要となります。

そのため、小さいサイズの金のインゴットを購入するならば、代わりに金貨を購入するのもおすすめです。
購入価格が安い割に純度もインゴットと変わらないものが多く存在するほか、購入に手数料が必要ないというのも金貨購入の魅力といえるでしょう。また、貴金属店以外にも銀行やデパートなどでも購入できる手軽さもポイントです。

■ LBMAの厳格な基準とは

ロンドン貴金属協会(LBMA)は、イギリスの中央銀行であるイングランド銀行の管理下にあり、金を直接売買する銀行やディーラーが加盟している貿易協会です。
世界中の金取引業者に対して取引方法を規定する組織であり、金市場の取引の信頼性を保証しています。

また、LBMAには鉱山所有者や金の精錬業者・加工業者なども加盟しており、これらの加盟者に対して取引する金の品位やインゴットの規格を守ることを義務付けています。

その基準は非常に厳格であり、たとえば最高品質のグッド・デリバリー・バー(GDB)というLBMAの認定規格であれば、金の純度は99.5%以上と定められており作成後も厳しい審査が待っています。
また、純度以外の条件として、インゴットの生産から輸送までをLBMAの認可を受けた業者によって行わなければなりません。

しかし、その厳しい基準をクリアしたものであれば品質は間違いなく最高のものです。
このような高い品質保持を要求しているからこそ、LBMAが認可した企業のインゴットは世界中で取引されています。

■ 日本のインゴット公式ブランド

LBMAから認可を受け、インゴットを作っている日本の貴金属業者は全部で12社あり、そのどれもが高い基準をクリアした企業ばかりです。
インゴットを購入するならば、この12社のなかから選びましょう。
どれも高い品質のインゴットを販売しているため、金メッキのような偽物や混ぜ物をした品質の低い金を買う心配がありません。
ここでは認定を受けた12社のなかでも、金取引の規模が大きい4社を紹介します。

(1) 田中貴金属
日本における金の取扱業者といえば、田中貴金属をおいてほかにありません。
長年にわたり電子・電機産業などに使われる高品質・高純度な金を供給しているほか、LBMAに加盟している企業が作成したインゴットの純度を確かめるための分析試料の作成も担っています。
また、世界で5社しか存在しないLBMAの認定基準を審査する企業でもあります。

(2) 徳力本店
徳力本店の前身は、江戸時代から続く金銀の改鋳業者です。
連綿と受け継がれた高い技術力が魅力であり、インゴット以外にも工業用や宝飾用など幅広く金製品を作成しています。
その技術力は素晴らしく、数々のスポーツにおける優勝杯の制作を請け負うほどです。
現在では長年金に関わってきたノウハウを生かし、金投資に関するサポートにも対応しています。

(3) 石福金属興業
多くの企業が貴金属以外にもさまざまな金属を売買するなかでも、石福金属興業は多角化経営をせず、貴金属の精錬と製品の製造と販売を続けてきた会社です。
現在では金地金以外にも、時計分野や医療分野にも多種多様な製品を供給する総合メーカーとなっています。
堅実な経営方針は、金の購入先として安心できるのではないでしょうか。

(4) 三菱マテリアル
昨今、金をはじめとした貴金属の回収先は、家電やパソコンなどの廃棄された基盤になりつつあります。
三菱マテリアルは業界でも早期に廃棄基盤からの回収に目を付け、リサイクルを促進する傍ら、いわゆる都市鉱山から金を回収・精錬している企業です。
金以外にも高品質の銅や銀、プラチナなどの各種貴金属のほか、錫や鉛などの回収も請け負っています。

3. インゴットの刻印の意味

インゴットにはブランド名や品位などの刻印がされており、一目見ただけでどこの企業が製造したインゴットなのか、金の重さや品位はどの程度かが判断できるようになっています。
これらの情報は実際に取引をする上で非常に重要であり、特にどこの企業が製造したのかは金の品質の信頼性にもつながる不可欠な要素です。

LBMAの厳正な管理下で作られたインゴットは、純度や品質に対する高い信頼性を持つ製品です。
その信頼に対する付加価値のぶんだけ、インゴットの取引は通常の金取引よりも高い「インゴット価格」で取引されています。

日本の金市場においては、LBMAが認可した企業が発行するものだけをインゴットとみなしており、それ以外のものは単なる金の塊です。ここではインゴットの刻印について、解説していきます。

■ ブランド名の刻印

LBMAから認可を受けた企業が作るインゴットには、その企業を表すブランドの意匠が刻印されます。

たとえば、三菱マテリアルであればお馴染みの三つのひし形が集まったものが、徳力本店ならば社名の「徳」の字を意匠化した刻印が刻まれています。
ブランド名の刻印は、「LBMAから認可を受けた企業が作ったもので間違いありません」という証明です。

この刻印があるものとないものでは、買い手側からの品質に対する信頼性が全く異なります。
インゴットのなかには、長年の取引で刻印が薄れてしまっているものも少なくありません。

しかし、ブランド名が消えてしまっていると、買い手としては刻印された品質や素材が本当なのか信頼できないため、買取価格が下がってしまったり、最悪の場合取引に応じてもらえなかったりします。

■ 品位・素材の刻印

インゴットの表面中段から下段にかけて、インゴットの素材や品位を示す刻印がされます。
そのなかでも特に「FINE GOLD」は純金を表す刻印です。

ただ、金は非常に柔らかい金属であり、ほかの金属や混合物を全く含まない100%純粋な金というものは生成が困難です。
そのため、金の含有量を示す品位は一般的に千分率を用いて、「999.9」と刻印されます。

刻印される品位は、インゴットの素材によって異なります。
金や銀であれば「999.9」が刻印されますが、プラチナの場合は「999.5」が刻印されます。

ただし、インゴットが製造された年代やメーカーによっては、品位の刻印が異なっているインゴットも珍しくありません。
品位が異なるインゴットは買取価格が下がるため、注意が必要です。

■ シリアルナンバーの重要性

各ブランドが発行しているインゴットには、個体識別のためのシリアルナンバーが刻印されています。
金は投資以外にも工業製品の材料としても使われることが多く、どのような用途にしても金の純度というものは非常に重要です。

適切に金の売買をするためには、製造段階から偽物を排除しなければなりません。
シリアルナンバーを刻印することで、インゴットの偽造を防止しています。

インゴットの取引時には、ブランドの刻印と同様にシリアルナンバーも厳しく確認されます。
刻印の有無は、金の品質を判断するための重要な材料です。

裏を返せばシリアルナンバーのないインゴットは偽物である可能性も高く、買取業者も慎重にならざるをえません。
自分が購入するときにも、シリアルナンバーをはじめとした刻印をよく確認し、本当に信頼できる業者から購入しましょう。

4. インゴットを所有する利点と注意点

昨今の先行き不透明な経済情勢から金に投資する人が増えているのは事実です。
しかし、一口に金に投資すると言っても金のインゴットを買う投資と、同じ金商品でも、たとえば金貨を購入する投資では、考えられるメリットやデメリットが異なります。

ここからはインゴットを所有するときの利点や注意点を、ほかの金投資との比較も交えながら解説します。

◆ 資産価値の安定性

現在、世界的にインフレが加速しており、日本も例外ではありません。

インフレになるとモノの価格が上がり通貨価値が下がるため、単純にモノである金を保有していると、それだけで自分の資産を守ることにつながります。
このようなインフレ時のリスクヘッジの手段として、多くの投資家は金を購入しています。

また一般的に、金は株式や債券、不動産などのほかの投資先と比べると資産価値が安定していることが特徴です。
古くから資産として通用した金は、不況時であっても株式や債券のように破綻するリスクが非常に低く、安心できる投資先として選ばれています。

このように金は景気変動の影響が小さいため、長期にわたって保有し続けることで資産を守ることができます。

◆ 換金の容易さ

インゴットを直接所有することのメリットの1つが、その換金のしやすさです。
インゴットは国際的な規格にそって製造されているため、きちんと刻印がなされているものであれば即日でも現金化が可能です。
ほかのさまざまな手続きが必要となる不動産や車などと比べると、その速さは目を見張るものがあります。

また、「金貨」や「金細工」という製品とは違い、インゴットはどのようにでも加工できる状態です。
別用途に用いるために一度鋳潰さなければならない金貨や金細工などの製品とは異なり、インゴットは所持している量の一部だけを売買するというような方法もできます。

このような高い流動性もインゴットを購入する利点と言えるでしょう。
ただし、分割するときの精錬加工には手数料が発生するため注意が必要です。

◆ 節税対策としての活用

金を売却するときは、一定以上の量と売却益になると所得税が発生します。

世界中で高い需要のある金は、どうしても偽物が後を絶ちません。
安定かつ信頼できる取引を行うためにも、金売買に対して国は厳しく目を光らせています。

そのため、この課税から逃れることはほぼ不可能と言ってよいでしょう。

しかし、金のインゴットは分割しての売買が可能です。
一定量を下回るようにインゴットを分割して所有し、数年にかけて売買していけば課税対象となる売却益を減らすことができ、結果として節税につながります。

また、分割したインゴットを相続・贈与すれば結果的に相続税や贈与税などの税負担を軽減することも可能です。

現在の税法では、現金は総額で課税対象として扱われるのに対して、金を分割すると分割した後のインゴットそれぞれが課税対象となります。
小分けにしたインゴットは、財産分与や資金の現金化に最適です。
ただし、売却時の市場価格によっては、売却益が出ない可能性も十分に考えられるため、売り時には注意しなければなりません。

◆ 注意点:市場や世界情勢の影響を考慮しよう

株式投資であれば所有しているだけで配当が受け取れますが、金のインゴットは所有することで発生する利益、インカムゲインが生まれません。インゴットへの投資で利益が発生するのは、購入したインゴットを売却したときだけです。
そのため、利益を得るためには「安く買って高く売る」ということが必要になります。

しかし、コロナ禍やロシアのウクライナ侵攻など世界情勢は混迷を極めており、金の市場価格は時々刻々と変動し続けています。
さまざまな要素が複雑に絡み合う金価格の値動きは、歴戦の投資家でも正確な予測が困難です。
結果的に売却のタイミングがつかめず、売り時を逃してしまった投資家も少なくありません。

このような価格変動のリスクは、決して売却益に限ったものだけではありません。
本来は不況やインフレのリスクヘッジとして購入される金ですが、値動きによっては現金を持ち続けていた方が良い場合も十分に考えられます。
インゴットを買う投資家には、世界情勢や市場の反応を読み、適切な判断を下せる能力が必要です。

5. インゴットは、資産を守るための手段として有効

インゴットの購入、そのなかでも金のインゴットを買うことは資産を守るための有効な手段です。
昨今の国際情勢や経済動向の不透明さから、株式や債券はもちろんのこと、通貨でさえも信用できないような状況になっています。
そのような状況にあって、安全資産である金の購入を考えることは当然のことです。

金投資には数多くの形が存在しますが、インゴットは国際的な機関による実績と信頼に裏打ちされた確かな価値があるものです。
所有していれば、万が一のときにも備えられます。金投資の1つの形としてインゴットは有効ですが、それに伴う危険性や問題点なども理解した上で購入しましょう。

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