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金価格の歴史 現代の金価格変動編⑥―アベノミクスから1,500ドル突破まで

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2013年のアベノミクス開始から2020年初頭までの期間は、金価格の歴史において極めて重要な転換点となりました。この時代の金価格変動を振り返ることで、現在の投資環境を理解する手がかりが得られるでしょう。

安倍政権による大胆な金融緩和政策は、円安を促進し、国内の金価格上昇をもたらしました。その後、世界的な金融緩和競争やブレグジット、米中貿易摩擦といった要因が重なり、金価格は2019年についに1,500ドル台を突破するに至ったのです。

アベノミクス始動と金価格への影響(2013-2015年)

2013年に安倍政権が始動したアベノミクス政策は、日本の金融政策を根本的に変え、金価格にも劇的な影響を与えました。この時代の金価格変動を理解することで、政策と貴金属市場の密接な関係が見えてきます。

アベノミクスの「3本の矢」のうち、特に第1の矢である「大胆な金融緩和」が金価格に与えた影響は計り知れません。日本銀行は2013年4月に「量的・質的金融緩和」を導入し、2%の物価安定目標を掲げました。

この政策転換により、1ドル=80円台だった為替相場は120円台まで円安が進行し、国内の金価格構造に大きな変化をもたらしたのです。

円安進行と国内金価格の上昇メカニズム

円安が金価格に与える影響は、シンプルでありながら強力なメカニズムによるものです。金の国際価格はドル建てで決まるため、円の価値が下がれば、同じ金でも日本円での価格は自動的に高くなります。

2013年から2015年にかけて、この換算レートの変化が顕著に現れました。国内金価格は4,000円台前半から5,000円台に迫る急激な値上がりを記録し、わずか2年余りで約25%もの上昇を見せたのです。

たとえば、ドル建て金価格が1オンス2,000ドルで一定だったとしても、1ドル=130円から150円に変化すれば、日本での金価格は26万円から30万円に上昇します。

この期間の特徴的な点は、ドル建ての国際金価格が下落傾向にあったにもかかわらず、国内金価格は上昇を続けたことです。2013年1月には1オンス1,690ドルだった国際金価格が6月には1,225ドルまで約28%下落したものの、国内では円安効果により価格上昇が続きました。

日銀の金融緩和政策と投資家心理の変化

日銀による量的・質的金融緩和は、単純な為替効果を超えて投資家心理にも大きな変化をもたらしました。低金利政策の長期継続により、金利を産まない金への投資ハードルが下がり、安全資産としての金への注目が高まったのです。

アベノミクスに伴う大幅な財政出動は、財政悪化による日本国債の価値低下への懸念を呼び起こしました。この状況下で、インフレ懸念が高まると同時に、実物資産である金がインフレヘッジとして再評価されるようになりました。投資家たちは、将来のインフレリスクに対する保険として金を位置づけ始めたのです。

しかし、この時期の金価格動向は複雑でした。国内では円安効果による上昇が続く一方で、国際的には米国の量的緩和縮小観測により金価格が下落するという、二面性を持った展開となりました。

このような状況は、金価格がグローバルな金融政策の影響を強く受ける資産であることを改めて示したといえるでしょう。

金価格安定期から上昇基調への移行(2015-2018年)

2015年から2018年にかけては、金価格が安定期から上昇基調へと移行した重要な期間でした。この時期の特徴は、アベノミクス初期の激動的な変化が一段落し、金価格が新たな上昇トレンドを形成し始めたことです。

2015年の平均金価格は4,564円、2018年には4,543円と、一見するとこの3年間は横ばいに見えますが、その内実は大きく異なります。

2016年後半からは明確な上昇基調が始まり、2019年以降の大幅上昇への基盤が形成されたのです。

世界的な金融緩和競争と金への資金回帰

2015年以降、世界各国の中央銀行による金融緩和競争が本格化しました。日本銀行のマイナス金利政策導入、欧州中央銀行の量的緩和拡大、米国の利上げペース鈍化などにより、世界的に低金利環境が継続したのです。

この低金利政策の長期化は、金利を生まない金への投資ハードルを大きく下げました。従来、金投資の機会コストとなっていた金利収入が限りなくゼロに近づいたため、インフレヘッジや安全資産としての金の相対的魅力が高まったのです。

特に実質金利がマイナス圏に沈むことで、金への資金回帰が加速しました。

ブレグジット決定と金価格への影響

2016年6月23日のブレグジット決定は、金価格に劇的な影響を与えました。英国のEU離脱という歴史的な選択は、世界経済の不確実性を一気に高め、投資家たちのリスク回避姿勢を強めたのです。

国民投票の結果が判明した直後、金価格は急騰しました。一時的に1オンス1,300ドルを超える場面もあり、わずか数日で100ドル近い上昇を記録しました。

この時の金価格上昇は、まさに「有事の金買い」の典型例といえるでしょう。ポンド安やユーロ安も金の需要を押し上げた要因となり、通貨不安時における金の価値保存機能が改めて注目されました。

ブレグジットの影響は一時的なものではありませんでした。離脱交渉の長期化により不確実性が継続し、金価格の底上げ要因として作用し続けたのです。

地政学リスクと金の安全資産需要

この期間には、ブレグジット以外にも数多くの地政学的リスクが金価格を支えました。中東情勢の不安定化、北朝鮮問題の緊迫化、米国政治の混乱など、世界各地で発生した政治的不安が金の安全資産需要を高めたのです。

特に注目すべきは、これらのリスクが金価格の下支え要因となったことです。従来であれば一時的な上昇で終わることが多かった地政学リスクですが、この時期は複数のリスクが重層的に存在したため、金価格の底堅さが維持されました。

投資家たちは、先行き不透明な世界情勢に対するリスクヘッジとして、金のポートフォリオ組み入れを本格化させたのです。

この結果、2018年後半には金価格が明確な上昇トレンドに転換し、翌2019年の1,500ドル突破への道筋が整ったといえるでしょう。

1,500ドル突破への道筋(2019-2020年初頭)

2019年から2020年初頭にかけて、金価格は歴史的な節目となる1,500ドル台を突破し、さらなる高値を目指す展開となりました。この時期の金価格上昇は、複数の強力な要因が重なったことによる構造的な変化を示しており、現在に至る金高騰の基盤となったのです。

2019年8月、金価格は1オンス1,500ドルを突破し、約6年ぶりの高値水準に到達しました。この突破は単なる一時的な上昇ではなく、世界経済の根本的な変化を反映したものでした。その後、2020年初頭には1,600ドル台まで上昇し、コロナ禍による更なる急騰への足がかりを築いたのです。

米中貿易摩擦と金価格押し上げ要因

2019年に本格化した米中貿易摩擦は、金価格上昇の最も重要な要因の一つでした。両国間の関税合戦は世界経済の先行きに深刻な不確実性をもたらし、投資家たちのリスク回避姿勢を強めたのです。

特に注目すべきは、中国が戦略的に金の購入を拡大していたことです。中国人民銀行は2018年12月から金の購入を再開し、2019年には毎月コンスタントに金準備を増やし続けました。これは、米ドル依存からの脱却と、貿易摩擦に対する一種の対抗措置としての側面がありました。

貿易摩擦の長期化懸念は、世界的なサプライチェーンの混乱や経済成長の鈍化を予想させ、投資家たちは安全資産である金へと資金を移しました。2019年6月のG20大阪サミットでの米中首脳会談後も根本的な解決には至らず、不確実性が継続したことが金価格の底堅さを支えたのです。

実質金利低下と金投資の魅力度向上

2019年年央に起きた米国実質金利のマイナス領域突入は、金価格1,500ドル突破の決定的な要因となりました。実質金利とは名目金利からインフレ率を差し引いたもので、これがマイナスになることは、金利を生まない金の投資魅力度を大幅に向上させる効果があります。

FRB(米連邦準備制度理事会)は2019年7月から3回連続で政策金利を引き下げ、これにより10年国債利回りも大幅に低下しました。一方で、インフレ期待は底堅く推移したため、実質金利は急速にマイナス圏に沈んだのです。

この状況下で、投資家たちは従来の「金は金利を生まない」という投資上の制約が薄れたと認識しました。預金や債券の実質リターンがマイナスとなる環境では、価値保存機能に優れた金の相対的魅力が格段に高まったのです。2019年6月の金ETFへの資金流入は月間で146億ドルに達し、約7年ぶりの高水準を記録しました。

さらに、この実質金利のマイナス状態が長期化するとの見方が広がったことで、金価格の上昇トレンドが確固たるものとなりました。2020年初頭までに金価格は1,600ドル台に達し、その後のコロナ禍による2,000ドル突破への道筋が整ったといえるでしょう。

まとめ

2013年のアベノミクス開始から2020年初頭の1,500ドル突破まで、金価格は様々な要因により大きく変動しました。アベノミクスによる円安進行は国内金価格の上昇をもたらし、その後の世界的金融緩和競争やブレグジット決定が金への資金回帰を促進しました。

2019年の米中貿易摩擦激化と実質金利のマイナス転落により、金価格は遂に1,500ドル台を突破し、安全資産としての金の価値が改めて注目されるようになったのです。

次回 現代の金価格変動編⑦―コロナ後の金価格高騰

続く記事「金価格の歴史 現代の金価格変動編⑦―コロナ後の金価格高騰」では、2020年のパンデミック発生以降に起こった未曾有の金価格急騰について詳細に分析いたします。

コロナ禍による経済混乱、各国の大規模な財政・金融政策、そして2,000ドル台突破に至る驚異的な価格上昇の背景とメカニズムを解き明かします。現代金融史に刻まれる激動の時代の全貌を、ぜひ次の記事でご確認ください。

"金価格の歴史 現代の金価格変動編⑦―コロナ後の金価格高騰"へ

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