カナダ金貨100周年記念金貨とは? 発行の経緯や希少性を解説
カナダの首都、オタワ。歴史あふれる街並みのなか、市内を流れるオタワ川の畔にたたずむのがロイヤル・カナディアン・ミント(オタワ造幣局)です。
1908年にイギリスの王立造幣局の支局として設立された、この造幣局は現在でも設立当時の面影を残しており、現在でも主に記念硬貨やメダルの製造を行っています。
今回紹介するカナダ金貨100周年記念金貨は、そんなカナダの造幣局と、カナダ建国の歴史を感じさせる1枚です。
発行背景と特徴
発行国 | カナダ |
発行年 | 2012年 |
素材 | 金99.99% |
額面 | 500カナダドル |
重量・直径 | 156.05g / 60.15mm |
図案(表) | ジョージ5世の肖像 |
図案(裏) | オンタリオ、ケベック、ニューブランズウィック、ノバスコシアの紋章 下部に日付「1912–2012」と「500 DOLLARS」の二重記念刻印 |
この直径60mmを超える巨大な金貨は、1912年に初めてカナダ造幣局が自国通貨として鋳造した「最初のカナダ金貨」の発行を記念して鋳造されたものです。
表面にはジョージ5世の肖像、そして、裏面には独立当時の4州の州章という1912年に発行された金貨のデザインを再現しつつも、現代技術によるプルーフ仕上げや細やかな彫りを実現した見た目にも豪華な1枚です。
世界で僅か200枚ほどしか生産されていないため、非常に希少価値が高く、コレクターの間では9,000〜16,000ドルという高額で取引されています。
ジョージ5世とカナダ
この記念硬貨の表面に刻まれたジョージ5世は、20世紀初頭のイギリス国王です。
当時はまだ、大英帝国の一部であったカナダにとっても国家元首にあたる人物であり、カナダ国内で発行された数々の紙幣や切手、硬貨などにも肖像画が使用されています。
しかし、彼の治世中、カナダは自治領から国際的自立を進め、事実上の独立国家としての地位を築いていきます。ジョージ5世はまさに、その過渡期に君臨した象徴的な存在でした。
「平凡な1人の人間にすぎない」王様
19世紀末から20世紀初頭の欧州は、大国同士の利権や民族の自決などが複雑に絡み合い、うねり始めた激動の時代です。
そのような時代に大英帝国の舵取りを任されたジョージ5世は、現在でも誠実で責任感の強い国王として、イギリス国民から敬愛を受けています。
1914年に第一次世界大戦では、ジョージ5世は連日のように兵士たちを見舞い、戦傷者には帽子を脱いで膝をつき、親しく声をかけたと記録されています。前線視察を行うなど、自ら国民に寄り添う姿勢を貫きました。
また、ヨーロッパ各国の王室の親族関係を理解しつつも、第一次世界大戦ではドイツとは敵対し、ロシア革命では皇帝の亡命を拒否しています。
これは、イギリス国王として中立性を保ち、血縁よりも国家の利益を優先する決断だと言えるでしょう。
それ以外にも、連邦各国の独立運動に対しては、硬軟織り交ぜたさまざまな対策を実施。世界恐慌においても、挙国一致内閣の設立に尽力、自ら王室費の削減を提案するなど、イギリスが直面した国難の数々で活躍しています。
ジョージ5世は、1935年に国民に向けた演説のなかで、自らを「平凡な1人の人間にすぎない(I am only an ordinary man)」と語っています。
この「平凡」とは自分も国民と同じように責任を担う存在であることへの深い自覚を表していたのではないでしょうか。
カナダ独立への道のり
ジョージ5世の治世下は、大英帝国のもとで数々の国が独自の道を歩みはじめた時代でもあります。その代表的な国の1つが、北米のカナダです。
カナダは19世紀末まで、イギリス帝国の「自治領(ドミニオン)」として、内政こそ行っていましたが、外交・立法の最終権限はロンドンにありました。
しかし、1914年に第一次世界大戦が勃発すると、カナダ政府は独自の判断で軍を派遣。大きな人的・経済的貢献を行い、その存在が国際的に注目されるようになりました。
戦後のヴェルサイユ条約にもカナダは独立国として署名し、国際連盟にもイギリスから独立した1つの国家として加盟を果たします。
そのような流れから、1926年には「バルフォア宣言」が採択されます。これによりイギリスと自治領は対等な主権国家であることが正式に認められました。
そして1931年には「ウェストミンスター憲章」が制定されます。これにより、イギリス議会はカナダの立法に干渉する権限を失い、カナダは法的にも事実上の独立を達成しました。
ジョージ5世はこの重要な法案に君主として署名し、英王でありながら、カナダの独立を公に認めた国王となりました。
ロイヤル・カナディアン・ミントとカナダの通貨史
ロイヤル・カナディアン・ミントは、カナダにおける通貨発行の中心です。その歴史は、まさにカナダの経済の歴史と言っても過言ではありません。
現在、メイプルリーフ金貨や数々の記念硬貨を発行する、ロイヤル・カナディアン・ミントの歴史とはどのようなものなのでしょうか。
自国通貨発行までの道のり
カナダにおける国内通貨の流通は、1858年にはじまりました。しかし、このときの通貨はイギリスの王立造幣局に作成を依存していました。
また、国内には欧州各国の通貨や、銀行や商店が勝手に作った通貨、政府による紙幣など、数々の通貨が流通し、それが統一的な価値を持たないという、まさにカオスな状態でした。
このような状況のなか、1908年にオタワにイギリスの王立造幣局の分工場が設置されます。これが現在のロイヤル・カナディアン・ミントの原型です。
この工場では、1912年にはカナダ初の国産金貨として5ドル金貨と10ドル金貨の鋳造が行われ、貨幣発行の主導権を自国で担うようになります。
当時の硬貨に使用された金はカナダ西部で産出されたものであり、まさに国内資源による国家通貨として、これ以上ないものとなりました。
その後、カナダの国家的自立が進む中で、造幣局もイギリス本国からの管轄を離れ、世界恐慌1931年には事実上の独立造幣機関となります。
1976年には完全な国営法人として再編され、名称もロイヤル・カナディアン・ミントに統一、現在に至ります。
現代に通じる造幣技術
現在のロイヤル・カナディアン・ミントは、世界屈指の高精度な造幣技術を誇る機関として国際的にも高い評価を得ています。
その象徴が、1979年から発行開始された「メイプルリーフ金貨」です。純度99.99%を実現したこの金貨は、世界中の投資家・コレクターから高く支持され、カナダの造幣技術を一躍世界に知らしめました。
加えて、ロイヤル・カナディアン・ミントは微細なレーザー彫刻技術や偽造防止用の複雑なセキュリティ加工を導入し、貨幣の安全性と美術性を両立させています。
メイプルリーフ金貨にはホログラムやリードマークが導入され、現在では銀貨・プラチナ貨にもその技術が応用されています。
また、ロイヤル・カナディアン・ミントは他国からの硬貨製造委託も多く受けており、年間数十億枚に及ぶコインを鋳造しています。
かつてイギリスに依存していたカナダの造幣が、今では世界の最先端を担う存在となっていることは、国家としての成長を象徴する事実といえるでしょう。
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