2024年パリオリンピック記念金貨について解説 独特の六角形の意味とは?
多くのスポーツ選手たちが妙技を競い、さまざまなドラマが生まれるオリンピック。その楽しみ方の1つとして、記念硬貨の収集があります。
毎回、その開催国や都市の文化や風俗とスポーツが見事にマッチしたデザインのものが発行されており、見る人を飽きさせません。今回は、2024年のパリオリンピックで発行された、少し変わった形の金貨について紹介します。
基本情報
| 発行国 | フランス |
| 発行年 | 主に 2021~2024年 |
| 素材 | 99.9%(0.999 純金) が基本 |
| 額面 | 複数(六角形金貨は250ユーロ) |
| 重量 | |
| 図案(表) | マリアンヌとエッフェル塔のデザイン |
| 図案(裏) | ノートルダム大聖堂、凱旋門などバリの名所 |
実は、過去オリンピックを3回開催した都市はロンドンとパリの2都市しか存在しません。(開催予定も含めればロサンゼルスも2028年大会で3回目)
そんな歴史的なイベントの特別感を出すためにも、今回発行された金貨は特徴的な六角形をしています。世界中で流通する金貨は一般的には丸形ですが、六角形にすることで希少性や芸術性を高め、コレクター向けとして価値を上げています。
また、 品位も99.9%と非常に高く、かつ、販売も限定的なため一層コレクション性が高まっています。フランス国立造幣局独自のプルーフ仕上げもまた、価値を高める要因です。
硬貨が六角形の理由
貨幣の形といえば、多くの人が円形を思い浮かべるのではないでしょうか。そのなかで、今回の記念硬貨は特徴的な六角形をしています。まずは、このような形の硬貨が生まれた理由を探っていきましょう。
実はフランス国土は六角形
硬貨のデザインは、その国の金属加工技術の水準を示すと同時に、その国の文化を映す鏡でもあります。今回の歴史的な硬貨の形が六角形をしているのは、フランス国土の形に由来します。
海外領土を除いたフランス本土は、大西洋、地中海、英仏海峡という3つの海、ベルギー、ドイツ、イタリア、スイス、スペインとの国境を辺に見立てると、およそ六角形の形をしています。
フランスが自国を六角形と称したのは、19世紀中頃、ちょうどルイ・ナポレオンによる第二帝政がはじまったころ、国民の国家への帰属意識が高まっていた時代です。公教育の制度が整備されるなかで教育関係者や地理学者のなかから自発的に「我が国は六角形である」と称することがはじまったとされています。
現在では、フランスの国土の形状を象徴する呼び名として六角形は完全に定着しており、フランスの地理や文化の比喩として使われることも少なくありません。日本をはじめとした各国の資料などでも「ほぼ正六角形」と表現されることもあり、「フランス=六角形」は世界共通の認識と言ってよいでしょう。
六角形の世界のなかで
現代のフランンス人は、自国を指して「l’Hexagone」と呼んでいます。
その国民的文化を反映してか、2015年に完成したフランス国防省庁舎は六角形をしています。このほか、パリ市内のバス停や公庁舎には六角形の意匠が使われている部分も少なくありません。
また、その源流ともなった学校教育の分野では、この六角形を元に自国の地理や自然環境、各地域ごとの特徴などをつかむという教育がされており、そこには視認しやすい形で自分たちの国を表現したことによる、他国とは違ったアプローチがあります。
それ以外にも、最近ではメトロポリタン・フランス、つまりはフランス本国を示す名称としても公文書も採用されており、2023年には政府レベルでも「l’Hexagone」を本土を示す言葉として採用する動きもあります。
ただ、これにはフランスの海外領土からは「六角形の外側」として疑義が呈されることも少なくありません。
貨幣が丸くなったワケ
先のオリンピック硬貨は、フランスの文化を反映させた素晴らしい逸品と言えるでしょう。
しかし、一般的に貨幣の形といえば、洋の東西、年代を問わず円形であり、今回のような多角形をした硬貨は、貨幣の歴史から見ると例外的な存在と言えます。では、なぜ、硬貨は円形になったのか。人類が円形に行き着いた理由を考えていきましょう。
古代から通貨は円形だった?
現在発見されている最古の金属貨幣は、紀元前7世紀頃のリディア(現在のトルコ西部)で鋳造されたものです。このとき発見された硬貨は、楕円に近い円形でした。これを受け継ぐこととなる古代ギリシャでも、引き続き円形の貨幣が使用され続けます。
貨幣が円形であったのは、ヨーロッパ世界だけではありません。始皇帝統一後の中国でもまた円形の半両銭が鋳造されたほか、漢王朝の時代に鋳造された五銖銭はいわゆる方孔銭と呼ばれる丸い形に四角い孔が開いている硬貨です。この形の貨幣は唐代まで使用されており、海を越えて日本にも渡ってきました。
それ以外にも、サーサーン朝やアッバース朝などのペルシア・イスラム世界で流通していたディナール金貨、東南アジアのクメール朝、スコータイ朝などで使用された貨幣も当初は銀塊でしたが、最終的には円形に落ち着いています。
つまり、金属貨幣を活用した文明はいずれも洋の東西を問わず、自発的に「貨幣は円形にすることが最適解」という結論に落ち着いたことが察せられます。
円に秘められた驚きの特徴
では、なぜ、円形に落ち着いたのか。その理由は、大きく3つあります。
1つ目は加工性の問題です。金属貨幣は打刻して模様をつけるという過程を挟むため、複雑な形にしてしまうと力の加わり方が均一にならず、ひび割れや欠けが生じてしまいます。その点、円形であれば加工時に金属に加わる圧力を均一に分散できるため、ひび割れや欠けが生じにくいという利点があります。
2つ目が、使用性の問題です。長く使っていると、金属といえども摩耗は避けられません。四角形や八角形など、角がある形では角の部分から摩耗し損傷が進んでいきます。当時の貨幣の多くは、貨幣金や銀などの価値がある金属で作ることで、その価値を担保していました。つまり、摩耗してしまうと貨幣自体の価値が下がってしまい、売買に支障が出ます。
反面、円形であれば丸形は 摩耗による体積損失も非常に小さく、 長期間、価値を維持しやすいことが円形の採用が進んだ理由とされています。
そして、3つ目が管理の問題です。貨幣の偽造は、それこそ貨幣文明が誕生してから常に存在すると言われており、中国では『韓非子』にも記録が残るほか、古代ギリシャでは偽造対策のため専門対策チームが存在するほどでした。円形は、多角形とは異なり一定の直径・重量を保ちやすい形状です。そのため、金属を削って不正に価値を抜く偽造行為を発見しやすかったと言われています。
また、偽造防止以外にも均一の重量・直径を保つことで秤や箱で管理しやすかったことも、人類が貨幣に円形を採用した理由と言えるでしょう。
円にならなかった硬貨
しかし、歴史に登場したすべての貨幣が円形というわけではありません。
中国周王朝時代の刀銭(刀型)やヴェネツィア共和国が発行したドゥカート金貨(楕円形)など、円形ではない金貨も多数存在します。確かに、普通に使用することを考えるならば円形が最も最適解でしょう。しかし、それは裏を返せば、「特殊な場面」では円形ではない方が適切であるとも言うことです。
たとえば、日本の小判。すでに江戸時代の技術でも、持ち運びに便利な小型の金貨は十分に鋳造できる水準であったとされています。
しかし、江戸時代は小判以外にも、銀銭や銅銭という複数の素材の硬貨が出回っていた時代です。金貨を小型化すると圧倒的に価値の違う銅銭と見分けにくくなり、商取引に支障が生じてしまいます。だからこそ、「高い」価値があることを伝わるようにするために、大きな小判形にしたと考えられています。
それ以外にも、イギリスのカットシリングも円形ではありません。元々、政府の発行していたシリングは円形でしたが、かなり高額通貨であり日常の小口決済には非常に使い勝手の悪いものでした。
そこで、この銀貨をハサミや鋸で切って半分や四分の一にすることで、小額決済対応の銀貨にしてしまいました。切った部分にも、元の刻印や切れ込みを入れて、額面を識別可能にしていましたが、切って使う以上、どうしても不揃いになってしまいます。不揃いさも含めて、日常の不便さを解決しようとした、当時の人々の知恵が伝わる非常にユニークな貨幣と言えるでしょう。
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2024年のパリ五輪開催を記念して発行された硬貨は、独自の六角形デザインや精巧な仕上げが魅力で、国内外のコレクターから高い注目を集めており、発行年限定の希少性も相まって人気の硬貨です。
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