モード界の帝王を称えるイヴ・サン・ローラン記念金貨を紹介
いつの時代にも、時代を変える天才がいます。産業革命の原動力となったワット、物理学の常識を一変させたアインシュタインなど、当てはまる学者や発明家は少なくありません。
しかし、ことファッション界において、時代を変えたと称されるほどの天才は、イヴ・サン・ローランをおいてほかにいないでしょう。
この金貨は、彼がファッション業界にもたらした功績を称えたものです。
基本情報
| 発行国 | フランス |
| 発行年 | 2006年 |
| 素材 | K24(純度99.9%以上の金) |
| 額面 | 500フラン(当時のフランスの通貨単位) |
| 重量 | 31.1g 直径:36mm |
| 図案(表) | イヴ・サン・ローランのシルエットと彼のサイン |
| 図案(裏) | フランス共和国の象徴である「RF」のロゴ イヴ・サン・ローランのデザインを象徴するハートモチーフ |
イヴ・サン・ローランの手がけた数々のデザインは、女性の社会進出や自由なライフスタイルを反映したものです。
そのなかで、スーツスタイルやタキシードなど、従来は男性のものであったファッションの要素を取り入れた女性服を提案、ファッションの新しい時代を築き上げました。
イヴのデザインは、伝統的なフランスの国民性と新しい時代の要望を融合させたものとして、国際的にも高い評価を得ています。
この金貨の発行は、彼のファッション界への貢献と、フランス文化への影響をフランス政府が公式に認めたことを示しています。
モード界の帝王 ~イヴ・サン・ローラン~
1955年のディオール入社後から頭角を現し、その後半世紀にわたってファッション業界を牽引してきたイヴ・サン・ローラン。
伝統的なフランスファッションに、新しい風を吹き込んだモード界の帝王に迫りましょう。
モード界への挑戦
1955年、ファッション誌『ヴォーグ』に一枚のデザイン画が投稿されます。これこそが当時19歳のイヴ・サン・ローランが書いたものでした。
そのデザインに非凡な才能を見出したクリスチャン・ディオール本人に呼ばれ、メゾン・ディオールに入社することとなります。
イヴが入社してから2年後にディオールは急逝しますが、このときすでにイヴは内外にディオールの後継者として扱われており、業界の注目の的でした。
その期待に応えるように1958年に初コレクション「トラペーズ・ライン」を発表、肩から裾へと自然に広がるAラインの美しさを強調した新機軸のデザインで、一気に名声を高めます。
1961年には、自身のブランド「Yves Saint Laurent(YSL)」を設立、女性の社会進出を反映した服を数多く発表します。
特に、女性用のタキシードやパンツスーツなど男性的要素を取り入れた「ル・スモーキング」は当時のフランスでは批判的な意見も数多くありましたが、「これから」の女性を意識した服は、多くの人に受け入れられ、ファッション業界では1つのスタンダードとして確立することとなります。
ファッションの民主化
時代の変化は、何も女性の社会進出だけではありません。
50年代のフランスは1着何百万円もするようなオートクチュールが基本であり、顧客も貴族や映画スターなどの限られた人だけが出入りする狭い世界でした。
しかし、60年代に入り経済が発展するとともに、中産階級が発達していきます。それに伴い、ファッションも高級オートクチュールからプレタポルテ(既製服)が求められる時代へ変わっていきました。
この流れに対して、イヴは1966年に既製服ブランドラインである「リヴ・ゴーシュ」を設立します。高級オートクチュールの敷居を下げ、一般女性でも最先端デザインを楽しめるようにしました。
このイヴの行動は、「高級仕立て人が量産服を作るなどありえない」と業界全体から批判の的となってしまいます。
しかし、イヴは「オートクチュールは夢を作る。だが、プレタポルテは現実を美しくする」と真っ向から反論。事実、リブ・ゴーシュは大成功し、多くのブランドがプレタポルテの制作を始めるようになりました。
イヴ・サン・ローランのあとのモード界
第二次世界大戦間もない時代に活躍したイヴ・サン・ローラン。彼の活躍した時代はフランスだけではなく、世界が新しい時代へと進み出した時代です。
その時代の変化を捉え、ファッション業界に革新をもたらした彼は、まさに「帝王」と呼ぶに相応しい存在でしょう。
彼が作り出した新時代のファッションとはどのようなものなのでしょうか。ファッションの時代を見事イヴ・サン・ローランの「前」と「後」に分けた彼の功績を探りましょう。
新時代の幕開け
イヴのデザインは、女性の社会進出が根底にあります。
戦後復興期の女性の服というと、女性らしさや家庭的なイメージを強調するものばかりです。事実、イヴの師であるディオールの「ニュールック」もウエストを強調したドレスやスカート丈の長い服が主流であり、装飾が多く身体の動きを制限するデザインがほとんどでした。
そこで、イヴはジェンダーフリーやユニセックスの源流ともいえる、性別に縛られない服作りを展開します。
特に、彼のアイコニックデザインとも言える「ル・スモーキング」は、タキシードやパンツスーツなど、これまで男性のものであったファッション要素を取り入れた女性服です。
これは単なるファッションの枠に留まらず、「ジェンダー観」にも踏み込むものだったと言えるでしょう。従来の「男らしい」服を女性が着るという当時ではありえない発想は、これまでの女性服の常識では考えられないものです。
しかし、その後のファッション業界を見ればわかる通り、彼の挑戦的な試みは見事に成功し、女性のパンツスーツは、ジャン=ポール・ゴルチエ、アレキサンダー・マックイーン、リカルド・ティッシ、ジョルジオ・アルマーニなどの後年のデザイナーたちには標準装備的な発想となっていきました。
モードとアートの融合
男性的要素やプレタポルテの導入は、イヴの言う「ファッションは時代を反映する。私は、女性が自由を得た時代のファッションを作りたかった」の言葉の通り、時代に望まれたから生まれたものです。
しかし、これでは単なる時代背景に沿っただけに過ぎません。
彼が現在でも神聖視され、敬われるのは、「ファッション」を「着るアート」に変え、従来の服飾の概念を拡張した存在だからでしょう。
その最高峰とも言える「モンドリアン・コレクション」は、1着のドレスを1つの芸術作品へと昇華し、単純に「見る」楽しみを生み出したと言っても過言ではありません。
それまでも彼は自身のデザインにアフリカやモロッコ、日本の伝統模様などを大胆に採用し、これまでのフランスにはなかったデザインを次々と発信していました。
そのなかで、イヴはオランダの画家ピエト・モンドリアンの作品『コンポジション』をオマージュ、モンドリアンのモダニズムを大胆にも服のデザインへ取り入れました。
モンドリアン・コレクションは、ニューヨーク近代美術館にも展示されるなど、その評価はすさまじく、クリスチャン・ラクロワやジャン=シャルル・ドッセールなど、のちに芸術的モチーフを大胆に採用するデザイナーが続出したほどでした。
まさに、イヴは「ファッション」という概念を覆す挑戦を続けた「天才」として称されるべきデザイナーです。
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時代の美を革新した巨匠、イヴ・サン=ローラン。
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