見ざる聞かざる言わざる金貨について解説
「見ざる、言わざる、聞かざる」の3匹の猿と言えば、日本では日光東照宮が有名です。
これには「子どもには悪いものを見聞きさせず、言わせないようにせよ」という家康公のありがたい格言が込められています。
そして、その格言は海を越え、遥かアフリカの地で金貨のモチーフになりました。今回はソマリアが発行した見ざる聞かざる言わざる金貨について解説していきます。
基本情報
発行国 | ソマリア共和国 |
発行年 | 2006年 |
素材 | 金99.99% |
額面 | 4000シリング(日本円にして、およそ800円) |
重量 | 純金製は約1.24 g / 銀メッキ製は約25g |
図案(表) | 国章(コート・オブ・アームズ) 上部に「SOMALI REPUBLIC」、下部に「4000 SHILLINGS」 |
図案(裏) | 三猿 ・目を閉じる猿(見ざる) ・口を覆う猿(言わざる) ・耳を塞ぐ猿(聞かざる) |
2006年にソマリア政府が発行した「見ざる聞かざる言わざる」の金貨は、非通用硬貨、つまり記念品としての収集用硬貨として発行されました。
「見ざる聞かざる言わざる」の記念硬貨は、愛らしい猿のデザインと東洋の教えを象徴するユニークな要素から、コレクターの間で人気です。
純金製と銀メッキ製の2種類がありますが、どちらも発行枚数が限定的なことから、金の大きさや重さ以上の価格がつくことも珍しくありません。
三猿とは? その由来と歴史を徹底解説
日光東照宮にある神厩舎の長押上には猿の彫刻が8面あり、三猿はそのうちの1つです。
三猿をはじめとした神厩舎の彫刻は、いずれも播磨出身の彫刻家左甚五郎の作と伝えられており、その浮彫の芸術性と職人技が光るものとなっています。
そんな三猿は、一体何なのか。その由来や歴史を紐解いていきましょう。
三猿が示すもの
三猿だけが注目されがちですが、本来、日光東照宮の神厩舎の長押上の猿の彫刻は8枚1組であり、それぞれが人生の1シーンを示しています。
最初は母親に心配される子猿からはじまり、幼年期、少年期を経て、成長していく。そして、結婚して子をなすという人生絵巻が彫刻で繰り広げられています。
三猿はその2枚目、幼年期にあたるものです。これは、まだ幼く分別がつかないころは、悪いことは「見ない、言わない、聞かない」が良いということを表現しています。
同時に、親に対して「子どもたちを悪から守り、正しく育てよ」という親への教育に対するメッセージでもあるのかもしれません。
幼いころは今川義元のもとで人質として暮らし、厳しく育ってきた家康だからこそのメッセージと言えるでしょう。
実は日本が発祥ではない
古語における打消の「ざる」と「猿」をかけた言葉遊びから、三猿は日本発祥と思われがちですが、実際のところ、古代エジプトや古代インドにも似たモチーフは少なくありません。
なかでも、サンスクリット語には「悪を見ず、悪を聞かず、悪を言わず」といった教えがあり、それが後世に図像化されたものが三猿であるという見解も出されています。
特に、民俗学者の南方熊楠は、三猿の由来を古代インドに見出し、ラーマーヤナ伝説の主人公・ラーマに仕えた猿神ハヌマーンにルーツを求めており、自書で解説しています。
それ以外にも、『論語』の一節である「非礼勿視、非礼勿聴、非礼勿言、 非礼勿動」を由来とする説も有力です。
日本での広まり
いずれにせよ、三猿は中国やインドを発祥とし、仏教思想や道教信仰などと結びつきつつ発展し、奈良時代前後に日本へ伝来したというのが現在の通説です。
そのため、東照宮以前の文物や彫刻などにも三猿の姿を見ることができます。
一例としては、日本各地にある庚申塔です。中国の道教思想に端を発する庚申信仰に基づく庚申塔は「申」が猿を意味することから、三猿が彫られたものが各地に残っています。
また、滋賀県の日吉神社も有名です。日吉神社は猿を神の使いとする山王信仰の中心であり、三猿の彫刻も境内に飾られています。
それ以外にも、日本の仏教史書『元亨釈書』(1322年成立)の中にも「三猿の教え」が紹介されているほか、室町時代の説話集では「見ざる・言わざる・聞かざる」という言葉遊びが見られ、文献上もすでに定着していたことがうかがえます。
世界に広まる三猿
江戸時代になると、三猿は日本の工芸品にも登場するようになりました。この工芸品がオランダを通じてヨーロッパへと輸出されたことで、「三猿」の教えも伝わっていきます。
18世紀ごろには、各地の文献で「See no evil, Hear no evil, Speak no evil」という格言とともに紹介されており、19世紀になると風刺画を通じて民間にも広まりました。
ただ、日本では道徳的な教えでしたが、ヨーロッパでは「悪いことから目を背ける、耳に入れない」という不正義や問題から目を逸らす態度への風刺となっています。
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見ざる聞かざる言わざるの三猿は、古来より「余計なものを見ない、聞かない、言わない」という教えを象徴する存在として親しまれてきました。
日本から遥か遠くのソマリアの地で記念硬貨のデザインになったように、三猿は現在、海を飛び越え、世界中に広まっています。
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