タイ王国のバーツ金貨について解説
微笑みの国と称される東南アジアの仏教国、タイ。
世界でも類を見ない劇的かつ波乱万丈な歴史を歩んできたタイは、その成り立ちに根ざすのか、国民が持つ王室への敬意は非常に強く、世界でも珍しい不敬罪が存在します。
また、王室の慶事は国の祝い事となるため、日本同様に国王や王妃の即位記念など、王室行事に合わせて金貨が発行されている国です。
今回は、そんなタイ王国の金貨とともにタイの王室、そして、国の根幹ともいえる仏教文化について解説していきます。
基本情報
発行国 | タイ王国 |
発行年 | 記念式典に際して発行されるため、種類が豊富 |
素材 | 基本的に純金(K22~K24) 発行年や発行される種類によって異なる |
額面 | 発行される金貨ごとに異なる ・ラーマ9世陛下の即位50年金貨は3種類の金貨セット ・ラーマ10世陛下の即位・戴冠記念金貨は19,000バーツ |
重量 | 発行される金貨ごとに異なる ・ラーマ9世陛下の即位50年記念の6,000バーツ金貨:約15 g、約27 mm ・ラーマ10世陛下の即位・戴冠記念金貨は19,000バーツ金貨:20 g、約26 mm |
図案(表) | 表面には国王や記念となる人物の肖像 →正面~半身像で王の名がタイ語刻印されるのが一般的 ・ラーマ9世陛下の肖像 ・ラーマ10世陛下の肖像 |
図案(裏) | 王室の王冠・王璽・あるいは王室紋章/寺院や儀礼的図案 →戴冠や即位記念の金貨は、王室関連のものが使われるのが通例 |
タイの記念金貨は非常に多く、先に述べた国王や王妃の即位記念や戴冠記念に限らず、王子や王女の誕生日などを記念するものもあり、盛んに発行されています。
これらの金貨は、一般流通を目的とせず、記念品として発行される特別な硬貨です。数の多さやデザインの豊富さ、またタイの文化を反映したデザイン性からコレクターにも人気です。
また、高い金の純度を誇るため、世界市場、特に東南アジア圏では投資先としても人気があり、インゴットと並んで資産保全の手段としても活用されています。
タイとタイ王室の歴史
実は、世界には現在も続く歴史的な王家が数多く存在し、ハプスブルク家などの名門貴族の家系も現在まで継承されています。
しかし、国連加盟国193か国に限定すれば、王室がある国はわずか31か国しかありません。
そのうちの1つがタイ王国です。まずは、タイの歴史とともにタイ王室の歴史を深堀していきましょう。
東南アジアの王国
現在のタイに居住するタイ民族は、元は揚子江一帯にいたとされています。しかし、漢民族の圧迫を受けて南下、10世紀ごろに現在のタイ北部に居住しはじめたと考えられています。
その後、タイ民族は、マレー半島に興った数々の国と、時には戦い、時には友誼を結びながら、徐々に国としてまとまっていき、1238年のスコータイ王朝によってはじめて統一王国を形成しました。
スコータイ王朝の3代目であるラームカムヘーン大王は特に有名であり、現在に続くタイ文字を創始した人物です。また、仏教を国教として推進したのも、この王とされています。
まさに、現在のタイ王国の基礎を作り上げた人物と言っても過言ではないでしょう。
しかし、そんなスコータイ王朝も1351年にタイ南部にアユタヤ王朝が成立すると、徐々に勢いを失い吸収されてしまいました。
代わりにアユタヤ王朝はその後、約400年にわたり繁栄を続けます。
このころ、世界は大航海時代真っ只中。アユタヤ王朝も世界交易の一員となり、日本や中国のほか、インド洋を越えて、遠くのイギリスやフランス、オランダなどとも交易を行いました。
そんな世界経済の一翼を担い栄華を誇ったアユタヤ朝も、現在のミャンマーに興ったコンバウン王朝との戦争の末、1767年に首都アユタヤを攻め落とされ滅亡してしまいます。
アユタヤ滅亡後、華僑とタイ人の両親を持つタークシンがコンバウン王朝から領土の奪回に成功し、1768年に首都をトンブリーに置き建国したのが、トンブリー王朝です。
建国直後は、破竹の勢いで領土を回復、カンボジアの王位継承にも口を出すほどの勢力となりましたが、タークシン自身は1782年のクーデターで失脚、チャクリー将軍が王位を継承しました。
こうして、生まれたのが現在まで続く、チャクリー王朝です。
タイ王室の特徴
現在も続くタイのチャクリー王朝は、近隣の東南アジア諸国が続々と欧米列強の植民地と化していくなかでも、巧みに列強と渡り合い、独立を保ち続けました。
また、内政においても、歴代の王たちは先陣を切って国家の近代化や高等教育の導入などの国内の改革を次々と行ったことから、国民の精神的支柱とも言える存在です。
現在は、日本やイギリス同様に立憲君主制であり王室は政治的に中立ですが、実際には国民統合や危機回避に大きな役割を果たしてきています。
それが最も印象的だったのは、1991年の暗黒の5月事件でしょう。
民主化を求めるデモ隊と軍部が衝突したこの事件に際し、当時の国王であったラーマ9世は両方のリーダーを王宮に呼び、「そんな事でタイ国民のためになると思うか」と叱り飛ばしたと言います。
一夜にして政治的混乱を収拾した手腕と国王の政治的な成熟は、これまで象徴でしかなかった王の印象を一変させ、国民からの敬愛を集めるには十分なものでした。
その後もタイでは幾度となくデモや政変が相次ぎますが、そのたびにタイ国王は見事に仲裁し続けています。
タイの仏教とは
王室と並んで、タイ国民の精神的支柱とも言えるのが、仏教文化です。
国内には4万以上の寺院があり、人口比に対する寺院数は1寺院あたり1,700人ほどとされています。日本のコンビニ件数が1件あたり2200人であると言われていることを考えると、それ以上に身近な存在と言えるでしょう。
それほどに身近なため、記念硬貨にはタイの仏教寺院や仏像もたびたび登場します。ここからは、国民にとって身近なタイの仏教について、解説していきます。
タイの上座部仏教
日本の仏教とタイで信仰されている仏教は、同じ仏教でも中身がまったく異なります。
日本へ伝来した仏教は大乗仏教と呼ばれ、衆生の救済、つまりは世の中を仏の教えで良いものにしようという考え方に対して、タイの仏教は上座部仏教と呼ばれる宗派です。
この宗派は、釈迦の原始的な教えに近く、修行を行い解脱を目指すという実践重視の宗派です。
タイにはスリランカ経由で13世紀頃に導入され、スコータイ王朝時代に国教化しました。実に、700年以上もタイ国民とともにあるため、タイでは生活そのものに仏教が根付いています。
特に、僧侶は社会的に高い尊敬を受けており、男性は一生に一度は短期間でも出家することが美徳とされています。この考え方は広く根付いており、国王や貴族でも出家する人は少なくありません。
タイのタンブン
タイにおいて仏教は単なる宗教としての枠を超え、国民の精神的支柱として日常に深く根付いています。解脱を目指す僧侶だけではなく、一般民衆もまた仏教とともに生きています。
その象徴とも言えるのが、タンブンです。
タイ語で「ブン」は「功徳・善行」、「タン」は「する・行為」を意味し、直訳すると「功徳をする」となります。タイでは、日常のあらゆるところで、このタンブンを見ることができます。
たとえば、僧侶への托鉢。
人々が炊いたご飯や惣菜を差し出し、僧は受け取ることで互いに仏への信仰と共同体の絆を確認します。
そのほか寺院への参拝や瞑想、寄進もまたタンブンです。
このように善行を重ねて功徳を積むことは、来世や現世の幸福につながると信じられており、タイでは誕生日や葬儀など人生の節目にも必ず仏教儀礼が伴います。
人々の心を落ち着け、道徳規範を学び、家族や地域社会との結び付きを強める仏教は、タイ国民にとって日常のあらゆる場面で欠かせない精神的なよりどころとなっています。
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タイの王室や仏教文化を背景に発行されるバーツ金貨は、美しい意匠と高い金品位を誇り、コレクターや投資家から人気を集めています。
特に、歴代国王を刻んだものや特別な記念金貨は希少性が高く、市場でも安定した需要があります。
こうした価値ある金貨を手放す際には、専門知識を持つ査定が欠かせません。
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